演奏不安

演奏不安

音楽・演奏のあがり症とは?

音楽家にみられる「過緊張・あがり症」は、MPA(Music Performance Anxiety;音楽演奏不安症)と呼ばれています。

演奏不安・あがり症は、文字とおり、演奏するときに不安になり、心身のコントロールが利かなくなってしまう症状です。

繊細な旋律を奏でなければならない演奏家にとっては、非常につらい症状で、思った通りに演奏できないだけでなく、途中で止まってしまうなど、致命的な結果をもたらすことも少なくありません。

演奏不安・あがり症は、音楽専攻の学生が本来の才能を伸ばしきれなかったり、自信をなくして途中で専攻を変えてしまう大きな原因のひとつとなっています。

演奏不安・あがり症は、プロにも、アマにも起こりますが、アマチュア音楽家の中には、技術が向上し、演奏レベルが上達すれば、こういった演奏不安はなくなるはず、と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

技術が上になればなったで、さらに高いレベルの演奏を求められるし、難しい曲やパートが待っています。

ですから、プロ音楽家でも、このような演奏不安を抱えている人は多いのです。そして、中には、ひどい演奏不安によって、音楽活動を続けられなくなってしまうこともあります。

ISCOM(国際シンフォニーオペラ音楽家会議)での2212名への調査(1988)によると、24%の会員が、演奏不安を「問題」、さらに16%の会員が「深刻な問題」と報告していました。性別では、男性の14%に対して、女性音楽家の19%が、演奏不安を「深刻な問題」として報告していました。年齢別では、深刻な問題と報告したのは、35歳から45歳の会員のうち19%、35歳以下は17%、45歳以上は11%でした。 楽器別では、深刻な問題と報告したのは、管楽器演奏者の22%、弦楽器14%、木管楽器14%、その他の楽器17%という結果でした。

301名の音楽大学の学生と教員への調査(1990)によると、21%が演奏中に際立った不安を感じ、16.5%が、演奏不安がパフォーマンスにマイナスに働き、16.1%が演奏不安が自分のキャリアにマイナスに働いたと感じています。また、この調査では、男性より女性のほうが演奏不安を経験しやすいことがわかりました。

FIM(音楽家国際連盟)が行った調査(1997)によると、20%以上の音楽家が、過去に、ベータ遮断薬(ベータ・アドレナリン・ブロッカー)という、あがりを抑えることができる薬を飲んだ経験があるそうです。

なぜ自己流では演奏のあがりを克服できないのか?

音楽と感情の心理学音楽と感情の心理学 』(誠心書房2008)という書籍が、この演奏不安・あがり症について、ひとつの章(第7章)を割いて解説しています。

この本は学術的な書籍で、一般の音楽家や社会人が読むには、少し難解なところもありますが、海外の先進的な研究者がまとめたものであり、古くさくなく、とても参考になります。

その著者が、演奏不安を抱える音楽家が、自分なりの方法を続けても、なかなか効果を実感できない理由について解説していますので、部分的に引用したいと思います。

音楽家は自分では有益だと考える対処活動であっても、実際には演奏不安を緩和するには役立たない活動をしていることがある。対処の努力は驚くほど硬直的で柔軟性が見られない。

よくある例は、楽器奏者や歌手が大事な演奏の日に行う「儀式」である。たとえば何時間ものあいだ人と口をきかない、ある決まった食べ物を食べる、特定の色の服を着る、特定の通りを特定の時刻に通るなどである。こうした儀式的な行動は、音楽家たちがその儀式をしたときに偶然に演奏がうまくいったと信じたことから、何か月かあるいは何年もかかって発達してきたと考えられる

しかし対処の儀式的日課を実行できないときに問題が起こる。予定外のリハーサルが召集されることもあるかもしれないし、交通規制のせいで通行ルートを変えなければならないことになるかもしれない。こうしたときパターン化した対処儀式に頼ることを習得してきた音楽家は混乱状態に陥ってします。

第7章 第5節 演奏不安への対処

演奏のあがり症を克服するための4つの要素

続けて、著者は、演奏不安を克服するうえで有効な治療法には、4つの要素があると述べています。

自己査定スキル 自分がどれだけ緊張しているかを客観的に把握する。これがないと自分が学習している対処スキルの効果がわからない。
リラクセーションスキル
(バイオフィードバック訓練)
生理系の興奮をコントロールできるようにする。演奏不安とは生理ストレスであり、それをコントロールできるようする具体的方法が決定的に大事である。
認知的スキル 演奏前や演奏中に起きる否定的な考えに対抗する。方法は多いが、具体的には、イメージ演奏や思考の言語化
演奏本番で役に立つ
メンタルスキル
上記スキルを身につけても、本番で使えないと意味がない。あがり症の音楽家の多くは、自分にとって何が有効かを判断する段階に達しないうちに、すぐに別の方法を試してみようとする傾向にあり、決め手となる対処スキルがなかなか身につかないのが問題である。

私がこれまで関わった音楽家の多くが、自己流で、呼吸法や自律訓練法、成功イメージなどに取り組んでいました。しかし、ほとんどが、その効果を感じることが出来ていなかったのは、変化を起こすために重要な、これらの4つの要素が不足していたからです。

努力はされていたのに、その努力の大半が無駄になってしまっていたのです。

石井塾のプログラムは、これらの4つの要素を踏まえており、プロの専門家がしっかりと、本番で使えるようになるまで、メンタルスキル(対処法)を指導しています。

具体的には、呼吸法やイメージといったストレス対処法を、バイオフィードバックを使って正しく繰り返し指導し、本番で使えるようになるまで、地道に少しずつ負荷をかけながら上達させていきます

そのうえで、個人セッションを通して、これらの対処法がどのような効果があったのかを、一緒に振り返ります。そこに間違った思い込みや偶然の要素があれば指摘するので、正しい客観的な自己査定ができるようになるです。

このサイクルを繰り返していくことで、本当に自分にあったスキルを発達させることができるようになります。ここまで行けば、あがり症の克服は、時間の問題です。

演奏が上手になるには、良い先生について、自分の演奏を見直してもらうことが大事ですよね?あがり症の克服にも、全く同じことが言えるのです。

演奏家向けあがり症克服コース

あがり症を克服した音楽家の事例・体験談

音楽家(プロ・アマ問わず)は、真面目な方が多く、地道なメンタルスキルの上達をモットーとする石井塾との相性が抜群です。

抱えられている症状もほぼ同じで、これも石井塾の一番得意としているところです。症状の深さによって、時間は多少かかることがあるものの、十分な改善を見せるケースが多いです。

その中でも、私が特に印象に残っているのは、個人レッスンで、先生の前で演奏するときですら、ひどい緊張のために練習してきたことができなくなっていたアマチュア演奏家が、所属する市民楽団でのコンサートにおいて、演奏中に感動して「鳥肌」が立つまでに回復した事例です。

あがり症を克服したアマチュア演奏家が体験した鳥肌感覚

ひとりでも多く彼女のように「演奏の喜び」を取り戻せるようになることを祈っています。勇気をもって、一歩を踏み出しましょう!

これまで受講した音楽家の回復事例や体験談、報告を、下記のブログ記事一覧で紹介していますので、ご覧ください。