演奏のあがり症

演奏のあがり症

  • 本番になると手がガタガタ震えてしまい、自分の力の半分も発揮できない
  • 大きな本番やコンクールが近づくと、不安が高まり、眠れなくなる
  • ピアノの演奏で止まってしまうことが何回も続いている
  • これまで楽しんでいた演奏が、最近、苦痛になっている

あなたもこんなことに悩んでいないでしょうか?

本番で緊張してしまうのは、練習が足りないから。しっかり練習して、自信をもって本番に臨めば緊張しない」という昔の音楽教師の言葉は間違いではありませんが、実はそれだけでは不安や緊張はなくなりません。

私はこれまで多くの音楽家や演奏家のあがり症を克服させてきました。その経験から言えることは、そのような気合や根性、精神論に頼らずに、正しく自分と向き合うことで、演奏のあがり症は徐々に改善していくものです。

このページでは、このような演奏のあがり症、不安や過緊張に悩む音楽家・音楽愛好家のために、演奏のあがり症を克服するための大事なポイントを解説していきます。

たったの1日で演奏のあがり症が克服できるものではありませんが、地道に実践してみてください。

演奏のあがり症とは?プロの演奏家も震えている!!

演奏不安・音楽のあがり症とは、文字とおり、演奏するときに不安になり、心身のコントロールが利かなくなってしまう症状です。専門的には、MPA(Music Performance Anxiety;音楽演奏不安症)と呼ばれています。

繊細な旋律を奏でなければならない演奏家にとっては、非常につらい症状で、思った通りに演奏できないだけでなく、途中で止まってしまうなど、致命的な結果をもたらすことも少なくありません。

演奏不安・あがり症は、音楽専攻の学生が本来の才能を伸ばしきれなかったり、自信をなくして途中で専攻を変えてしまう大きな原因のひとつとなっています。

演奏不安・あがり症は、プロにも、アマにも起こりますが、アマチュア音楽家の中には、技術が向上し、演奏レベルが上達すれば、こういった演奏不安はなくなるはず、と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

技術が上になればなったで、さらに高いレベルの演奏を求められるし、難しい曲やパートが待っています。

ですから、プロ音楽家でも、このような演奏不安を抱えている人は多いのです。そして、中には、ひどい演奏不安によって、音楽活動を続けられなくなってしまうこともあります。

ISCOM(国際シンフォニーオペラ音楽家会議)での2212名への調査(1988)によると、24%の会員が、演奏不安を「問題」、さらに16%の会員が「深刻な問題」と報告していました。性別では、男性の14%に対して、女性音楽家の19%が、演奏不安を「深刻な問題」として報告していました。年齢別では、深刻な問題と報告したのは、35歳から45歳の会員のうち19%、35歳以下は17%、45歳以上は11%でした。 楽器別では、深刻な問題と報告したのは、管楽器演奏者の22%、弦楽器14%、木管楽器14%、その他の楽器17%という結果でした。

301名の音楽大学の学生と教員への調査(1990)によると、21%が演奏中に際立った不安を感じ、16.5%が、演奏不安がパフォーマンスにマイナスに働き、16.1%が演奏不安が自分のキャリアにマイナスに働いたと感じています。また、この調査では、男性より女性のほうが演奏不安を経験しやすいことがわかりました。

FIM(音楽家国際連盟)が行った調査(1997)によると、20%以上の音楽家が、過去に、ベータ遮断薬(ベータ・アドレナリン・ブロッカー)という、あがりを抑えることができる薬を飲んだ経験があるそうです。

なぜ自己流では演奏のあがりを克服できないのか?

音楽と感情の心理学音楽と感情の心理学 』(誠心書房2008)という書籍が、この演奏不安・あがり症について、ひとつの章(第7章)を割いて解説しています。

この本は学術的な書籍で、一般の音楽家や社会人が読むには、少し難解なところもありますが、海外の先進的な研究者がまとめたものであり、古くさくなく、とても参考になります。

その著者が、演奏不安を抱える音楽家が、自分なりの方法を続けても、なかなか効果を実感できない理由について解説していますので、部分的に引用したいと思います。

音楽家は自分では有益だと考える対処活動であっても、実際には演奏不安を緩和するには役立たない活動をしていることがある。対処の努力は驚くほど硬直的で柔軟性が見られない。

よくある例は、楽器奏者や歌手が大事な演奏の日に行う「儀式」である。たとえば何時間ものあいだ人と口をきかない、ある決まった食べ物を食べる、特定の色の服を着る、特定の通りを特定の時刻に通るなどである。こうした儀式的な行動は、音楽家たちがその儀式をしたときに偶然に演奏がうまくいったと信じたことから、何か月かあるいは何年もかかって発達してきたと考えられる。

しかし対処の儀式的日課を実行できないときに問題が起こる。予定外のリハーサルが召集されることもあるかもしれないし、交通規制のせいで通行ルートを変えなければならないことになるかもしれない。こうしたときパターン化した対処儀式に頼ることを習得してきた音楽家は混乱状態に陥ってします。

第7章 第5節 演奏不安への対処

演奏のあがり症を克服するための4つの要素

続けて、著者は、演奏不安を克服するうえで有効な治療法には、4つの要素があると述べています。

自己査定スキル 自分がどれだけ緊張しているかを客観的に把握する。これがないと自分が学習している対処スキルの効果がわからない。
リラクセーションスキル(バイオフィードバック訓練) 生理系の興奮をコントロールできるようにする。演奏不安とは生理ストレスであり、それをコントロールできるようする具体的方法が決定的に大事である。
認知的スキル 演奏前や演奏中に起きる否定的な考えに対抗する。方法は多いが、具体的には、イメージ演奏や思考の言語化
演奏本番で役に立つメンタルスキル 上記スキルを身につけても、本番で使えないと意味がない。あがり症の音楽家の多くは、自分にとって何が有効かを判断する段階に達しないうちに、すぐに別の方法を試してみようとする傾向にあり、決め手となる対処スキルがなかなか身につかないのが問題である。

私がこれまで関わった音楽家の多くが、自己流で、呼吸法や自律訓練法、成功イメージなどに取り組んでいました

しかし、ほとんどが、その効果を感じることが出来ていなかったのは、変化を起こすために重要な、これらの4つの要素が不足していたからです。

努力はしていたのに、その努力の大半が無駄になってしまっていたのです。

つまり、どんなテクニックも、これらの4つのスキルの枠組みの中で考えなければ、効果は限定的であり、極度のあがり症を克服するには不十分だということです。

まずは平常心を作りだすレゾナンス呼吸から始めよう!

ただ、ここまで徹底したプログラムが必要なのは、それなりに深刻なあがり症の場合です。もしあなたのあがり症が、それほどひどくなければ、自己流で改善する可能性も十分あります。

その場合には、私がまずお勧めするのは呼吸法とイメージで、具体的には、平常心を作りだす呼吸法をまずはしっかりと練習することです。

本物の平常心、偽物の平常心いつでも再現できる平常心を鍛えよう! 大会で力を発揮できるかどうかは、それまでどれだけ練習してきたか次第。しっかり準備して、自信を持っ...
レゾナンス呼吸法で、いつでも平常心を再現できるようになろう!レゾナンス呼吸法TMとは、塾長が提唱し、商標登録している呼吸法のやり方です。海外の医学・生理学・スポーツ心理学の論文に記載されていた「レ...

平常心を作りだす呼吸法はスキルですから、繰り返しの練習で必ず上達します。再現性を高められるはずです。

これまでの経験上、演奏好きの方は、地道に練習することに慣れているので、レゾナンス呼吸との相性は抜群です。

基礎として、呼吸をコントロールする、心拍をコントロールすることができれば、あとは本番でそれをどう実践活用するかという話になります。

演奏中に呼吸を実践活用しよう!呼吸のコントロールが、演奏のコントロールにつながる

呼吸法の基礎スキルとして身につけた後に、あなたが取り組むのは、本番に向けてレゾナンス呼吸をどう使うのかという応用スキルの習得です。

あなたの緊張度合がどれだけかにもよりますが、まずは次のような場面で、数分から20分くらいの呼吸法に取り組みましょう。

  • 演奏本番前日の夜
  • 演奏本番当日の朝
  • リハーサル前後
  • 袖や控室での順番待ち中

本番に向けてバタバタしてしまうかと思いますが、これらは忘れなければ必ず実行できるはずです。

そして、より望ましいのが、演奏中に呼吸を行うことです。とてもゆっくりとして曲であるならまだしも、演奏中に呼吸なんてできない!と思われるかもしれませんが、大丈夫。必ずできます

ただ、レゾナンス呼吸のように「5秒で吸って、5秒で吐く」といった呼吸にはならず、状況に応じて、

  • ゆっくり長く吐く
  • 短くしっかり吐く

こういった呼吸になるかと思います。そして大事なことは、吸うのではなく、吐くことを意識することです。

一般的には演奏中にブレスを入れることが推奨され、そのブレスは通常は「吸う」です。しかし、ぜひ「吐く」を試してみてください。かなり違いを実感できると思います。

なぜ「吐く」のかは、簡単にいえば、吐くほうが力が抜けるからです。ですから、早いパッセージの前で吐くことで、指がより回りやすくなるはずです。

ベテランのピアノ演奏家も、それまで「吸う」から「吐く」に変えたことで、本番ではいつもの演奏に近づけていると報告をくれています。

塾生(ピアニスト)の声20150821今回も、石井塾に3年通っている音楽家(ピアニスト)の声を紹介します。 ピアノのリサイタルや発表会で緊張してしまう人は多く、これまで...

これはピアノに限らず、弦楽器・管楽器ともにいえることです。ただ、管楽器や声楽については、演奏中はできず、休符のタイミングに限られるので、自分なりに試行錯誤が必要です。

結局のところ、演奏中に呼吸をコントロールすることは、脱力し、演奏を良くするだけでなく、自分をコントロールしているという感覚を持っていられることで、演奏中のあがってしまったときに起こりがちな「パニックや頭真っ白」にならないようにするための方法でもあるのです。

私が指導した多くの演奏家のなかには、譜読みをする段階で、どのタイミングで呼吸をするのかを考える癖がつき、楽譜に書き込む人も少なくありません。

演奏のあがり症を克服した音楽家の事例・体験談

音楽家(プロ・アマ問わず)は、真面目な方が多く、地道なメンタルスキルの上達をモットーとする石井塾との相性が抜群です。

抱えられている症状もほぼ同じで、これも石井塾の一番得意としているところです。症状の深さによって、時間は多少かかることがあるものの、十分な改善を見せるケースが多いです。

その中でも、私が特に印象に残っているのは、個人レッスンで、先生の前で演奏するときですら、ひどい緊張のために練習してきたことができなくなっていたアマチュア演奏家が、所属する市民楽団でのコンサートにおいて、演奏中に感動して「鳥肌」が立つまでに回復した事例です。

あがり症を克服したアマチュア演奏家が体験した鳥肌感覚社会人のFさん(40代・女性)は、音大出身でも、プロ演奏家でもありませんが、これまでの人生の多くの時間を演奏に費やしてきました。 ...

ひとりでも多く彼女のように「演奏の喜び」を取り戻せるようになることを祈っています。勇気をもって、一歩を踏み出しましょう!

これまで受講した音楽家の回復事例や体験談、報告を、下記のブログ記事一覧で紹介していますので、ご覧ください。

演奏のあがり症を克服するということ

演奏のあがり症で悩んでいる人のほとんどが、あがり症を克服すれば、まったく緊張しないで、自宅で練習しているときと同じような感覚で演奏できるようになれると考えがちです。

でもこれは幻想です。

演奏のあがり症を克服するということは、まったくあがらない、緊張しないということではありません。それはほぼ実現不可能か、到達するまでに、かなり時間がかかります。

演奏のあがり症のあなたがまず目指すところは、不安や緊張がない状態ではなく、不安や緊張があっても、自分のパフォーマンスを発揮できるようになるということです。

もちろん、最初の段階では、その自分のパフォーマンスというのは、自宅と同じレベルではなく、多くの場合、少し下がります。敢えていうとすると7-8割でしょうか。

しかし、そういった緊張があっても、自分のパフォーマンスが発揮できる経験を重ねていけば、徐々に不安や緊張はさらに小さくなり、自分のパフォーマンス発揮度も高まるのです。

これは大事なことです。

なぜならあがり克服を目指して、呼吸のトレーニングを開始しても、結局本番であがってしまうと、そのトレーニングが役に立たないと思い込んで、そのトレーニングを続けなくなることがあるからです。

丁寧に呼吸のトレーニングを続けていれば、あがりの程度は実は小さくなっていますから、演奏ができないということないのです。しかし、感覚的に、不安や緊張が小さくなっていることを実感できないと、呼吸法の効果がないと思いがちです。

これこそ、上述した「演奏のあがり症を克服するための4つの要素」のひとつである「自己査定スキル」に該当するのですが、これが意外と難しく、自己流での克服を難しくしてしまいます。

その意味では、本来はプロの指導を受けるのが理想なのですが、それが許されないひとは、とにかく「継続は力なり」を信じて、地道に呼吸法の基礎と応用に取り組んでほしいと思います。

音楽家向け 演奏のあがり症克服コースあがり症を克服して、演奏の喜びをもう一度取り戻そう! 本番になると手がガタガタ震えてしまい、自分の力の半分も発揮できない ...