仕事やスポーツ、試験やプレゼンなどにおいて、過去に一度でも、その最中に、こんな感覚を持ったことはありませんか?
- リラックスしているが、とても集中している
- 商談での顧客反応が面白いほどわかった
- 自然に体が反応して、ゴールを決めた
- 心と体が完全に調和した無我の境地だった
- 大事な試験でいつも以上に集中できた
スポーツでは「ゾーン」という言葉が使われることが多いのですが、一般的にはフロー体験と呼ばれています。
フローを体験したことのあるあなたであれば、もう一度、いや何度でも、フローを体験したいと思うでしょう。それくらいフロー体験で得られる喜びは大きいものです。
石井塾では、クライアントがフローを体験してもらうことに、一番のテーマとして、この10年以上取り組んできました。
なぜならフローの喜びは大きいので、その強い充足感にあと押しされて、また同じような体験をしたいと、さらに頑張るためのエネルギーやモチベーションとなるからです。そしてそれが成長の源泉となるのです。
なかなか思ったようにはフローを体験できないものですが、フローの研究からわかっていることは、フローは生活や仕事、練習の質と結びついており、日々をどう過ごすかによって、フローは自分で起こす可能性を高めることができるものであるということです。
フローは「起こるもの」ではなく、「起こすもの」。そのために必要なことをしっかりと頭に入れて、準備をすることが大切です。
ここでは石井塾のフローメソッドを公開します。
フロー体験とは?
フロー体験とは、シカゴ大学のチクセントミハイ博士が「究極の集中状態」を定義した概念です。
フロー体験が起こると、全てが「流れ(フロー)」のようにスムーズに進んでいき、最高の力を発揮でき、時間を忘れて没頭し、疲れを感じることもなく、最高の充足感を感じることができると考えられています。
芸術家、俳優、音楽家、外科医、スポーツ選手などの特殊技能をもった人間に起こりやすいとされていますが、営業、システム開発、経理、企画など、どんな仕事でも起こりうるものですし、入学試験や趣味に没頭する中で起こることもあります。
外科医の場合、高度な外科手術の際には、20時間以上も続けて執刀することがあるといいます。また、「僕は作品制作のとき、何日もアトリエにこもって、寝る間も惜しんで作品制作に没頭するんだ」などと語るアーチストもいます。どちらも、時間感覚を失うほどの集中状態、フローに入っていると考えられます。
フローが起こる秘訣について、シカゴ・ブルズとLA・レイカースの2つのプロバスケットボールチームの黄金期を築いたNBAの名監督、フィル・ジャクソンは、その著書『シカゴ・ブルズ 勝利への意識革命』(PHP研究所)の中で、こう述べています。
秘訣は、考えないことだ。と言っても、馬鹿になるのではない。とめどなく次から次へと浮かぶ考えを鎮めて、自分の体が、頭に邪魔されることなく、やるように訓練されてきたことを本能的にできるようにするという意味だ。
NBA ヘッドコーチ フィル・ジャクソン
フィル・ジャクソンが語ったように、「秘訣は考えないこと」なのです。考えないで、これまで訓練してきたことを本能的にできるようにすることが大事です。
そしてそれは、あのブルース・リーの名言にも通じているのです。

石井塾のロゴはこれから来ています。
フローを体験する条件とは?
フローはいつでも起こりうるものですが、フローが起こるには、ひとつ重要な条件があります。それはプレッシャーです。あなたの能力に見合った適度なプレッシャーがなければ、フローは起こりません。
年間の利益目標が1億円である営業マンにとって、成約しても10万円の利益にしかならない商談でフローを体験することはまずありません。
プロ野球選手が、ファンとのふれあい草野球大会で、フローを体験することもありえません。能力に対して挑戦課題が低く、プレッシャーが低すぎるからです。
また反対に、初めて商談をすることになった新人営業マンが、初めての顧客向け商談でフローを体験することはありえないし、まったく実力の伴わない受験生が、東大を受けてみたら、フローを体験して合格してしまった!ということもありえません。
能力に対して挑戦するレベルが高すぎてプレッシャーが大きすぎるからです。

大きなフローと小さなフロー。大きなフローを起こすのは、小さなフローの積み重ね
スポーツや仕事の本番でのみ起こる、記憶に残る大きなフローだけが、フローではありません。もちろん、ここ一番で起こったら最高に幸せですが、大きなフローはそんなに頻繁に起こらないものです。
しかし、大きなフローをより多く体験したり、大きなフローほどの喜びはないけれども、もっと頑張ろうという充足感を与えるには十分な小さなフローは、もっと頻繁に起こることは可能ですし、しかも、日々をどう過ごすかによって、自分で起こす可能性を高めることができます。
スポーツや音楽の練習中に、ある課題に取り組んでいたら、あっという間に時間が過ぎていたという経験はないでしょうか?練習なのに、楽しくて仕方がないと感じたことはないでしょうか?
実はこういった練習で起こる体験もフローなのです。そして、こういった小さなフローを重ねていくことが、本当の成長につながります。
このような練習で起きるマイクロフローは、プロフェッショナルやトップアスリートだけでなく、学生やアマチュアにも起こるものであり、その実力レベルにかかわらず、起こった本人に喜びをもたらしてくれます。そしてその喜びが、さらに頑張ろうというモチベーションとなるだけでなく、本番での大きなゾーンにつながるのです。

石井塾では、10年以上も前から、本番でのフローを体験できるよう、「考えないで、感じる」メンタルトレーニング理論や方法に取り組んでいました。しかし今ではむしろ、このような能力向上につながる毎日の小さなフローへの取り組みを、現在の最大のテーマとしています。
どこから始めるのか?石井塾のアプローチ
小さなフローの積み重ねが、大きなフローの準備になるということがわかってもらえたとおもいます。それでは小さなフローをどのように作り出せば良いのでしょうか?
どんなに小さなフローでも、それに取り組んでいるときに、余計な不安や迷いがあっては、どんな小さなフローも起こりにくくなります。
あがり症による予期不安や、トラウマによるフラッシュバックが頻繁に起きているような低迷状態では、小さいフローすら起こりません。こんな心理状態のときに、あまり良い練習ができないのは当たり前なのです。
石井塾に入塾する多くの人の多くが、こういった課題を抱えています。だからまず大切なのは、あがり症やトラウマを克服させることなのです。少なくてもその影響を小さくするところから始めます。
そのための基本となるのがレゾナンス呼吸法です。それで平常心をいつでも再現できるようにトレーニングしていきます。

この基本トレーニングをしばらく続けていくと、多くの人が、日常的に、精神的な落ち着きを感じるようになります。また、何か不運なことがあっても、感情的にならずに、平常心を留まれるようになるのです。これで土台が整います。
そこから先は、塾生の状況に応じて、適度な負荷をかけて、能力と挑戦レベルが拮抗するところ(=フローチャネル)で努力が続けられるようにコーチングするのです。
具体的には、イメージトレーニングや、テーマ設定、目標設定、練習管理、反復練習に頼らない練習計画などです。
時間がかる地道なアプローチですし、クライアントの置かれた状況によって、どの程度の負荷をかけるのかが難しいところです。簡単すぎてもダメ、難しすぎてもダメ。このあたり「のさじ加減」がコーチの能力を決めるのです。