私は昔からとても緊張してしまうタイプだという自覚がありましたが、プロのオーケストラ奏者として数年、多くの本番を経験してはじめて、もっと精神的な部分から自分の音楽を見直してみたいと思ったのが入塾のきっかけでした。今まで、気合いで緊張をなんとかしてきた自分にとって、緊張はすべて科学的に対応できるという石井先生のメンタルトレーニング指導はとても新鮮で、すっと腑に落ちる感覚がありました。
今年、石井先生の元で、演奏のメンタル面での準備について多くのことを学び、自分の視野や考え方により広がりができたと感じています。楽器を弾いている時間だけが練習の時間ではないということ、少しの空いた時間でも自分をさらにメンタルトレーニングできるということ、そしてそれを本番に繋げられることが何よりも大きな収穫です。
石井塾で学んだことは、本番を迎えるための準備、それは楽器を練習することだけではなく、自分の精神状況などを予想し、いろんなパターンをこれまでの経験からシュミレーションして、それを整理して対処方法を考えておくなど、とても具体的なことでした。今まで自分で整理したことのない、自分のことを改めて見つめ直すその過程は、とても役に立つものでした。メンタルトレーニングを開始してからは本番1つ1つに対して、今までよりもずっと細かく、会場の様子、お客様の様子などまで予想しながら向き合うことができました。
今年の秋、あるご縁で、自分がソリストとしてコンチェルトを演奏する機会をいただきました。初めてのことであり、本番までの緊張感はものすごいものがありましたが、その緊張を舞台の上で良い感じで放てたと思います。舞台の上で「今を楽しむ」余裕までありました。お客さまや、今まで自分の演奏を聴いてきてくれた方達にもお褒めの言葉をいただきましたし、また何よりも自分自身が後悔なくやり切れた!と思えたのが本当に嬉しかったです。
もしも受講を考えている方がいたら、迷うより先にまずは試してみてほしいと思います。日本の音大ではこのようなメンタルトレーニングはカリキュラムに入っていないことがほとんどですが、海外に目を向けると音大のカリキュラムに入っていたり、自ら学ぶ音楽家がとても多いと聞きます。人前に立ち続ける音楽家にとって、このようなことを学ぶことは人生の財産になると思います。
石井先生から学んだことを自分の大きな武器にして、これからの長い音楽家人生を歩んで行きたいと思います。ありがとうございました。
サイトウ・キネン・オーケストラ ヴィオラ奏者
国内プロオーケストラ 首席ヴィオラ奏者
石井塾にとっては、毎年夏のセイジ・オザワ松本フェスティバルで編成される「サイトウ・キネン・オーケストラ」で、小澤征爾の指揮で演奏したことがある2人目の音楽家です(一人目はチェロ奏者の植木さん)。
ふたりに共通するのは、とにかく与えたメンタルトレーニング指導に対しての反応が、他の多くの音楽家とは違っていたということ。石井塾にはこれまで多くの音楽家・音楽家の卵が来ており、基本的には同じように指導します。しかし、その反応や姿勢には大きな差があります。例えば、呼吸法を指導しても、それをどれだけやるのか、セッションでの質問や気づきが多いだけでなく、私が次に教えようと準備していたことの「一歩先」をやってしまっていることがとても多いのです。
プロのオーケストラ団員として、普段から多くの本番をばたばたとこなしていましたが、入塾後は、毎回の本番に向けて、私が指導したことを組み入れて、自分なりにしっかりと準備して、本番を重ねていきました。入塾後、かなり早い段階で、自分の本当の演奏ができるようになってきた手応えを報告してくれました。そして、その良い流れのまま、人生初のコンチェルトも最高の形で終えることができたそうです。
しかし、少し改善したからといって、すぐに卒塾せずに、本当に自分のものになるまで、じっくりと取り組む必要があると考えていたのも、この二人の特徴でもありました。これからあと何十年にも及ぶ音楽家人生に大事なことが、そんなすぐに習得できるものではないということを、きちんと理解されているからでしょう。こういった姿勢も、やはりオーケストラで首席を任されるようになる上での資質なのかもしれません。
緊張などの理由から、本来の演奏ができないことがある音楽家のために、少しでもメンタルトレーニングや入塾の背中を押せるよう、実名で体験談を寄せてくれました。