ジュニア(中学生高校生)

中高生のテニス選手を、もう一段上のレベルに導くメンタルトレーニングとは?

ポイントシステムを導入しているジュニアテニスの世界では、僅差の実力差の中で、大勢が競い合っています。

選手たちは、ポイントを上乗せするために、多くの大会に参加して、勝ったり負けたりを繰り返し、そこで勝ち越しが多くなると、ポイントが加算され、その上のレベルに到達できます。

つまり、今どのレベルにいても、もう一段上のレベルに到達するには、技術を磨きながら、自分と同格か、少し上の選手に対して、力を出し切って勝利する必要があります。

しかし、中には、普段の練習では良いプレーをするのに、ポイントのかかる試合においては、力を出し切れずに、格下にさえも敗退し、本来の力に見合わないランキングに甘んじている選手も少なくないようです。

大事な試合をものにできない理由は何でしょうか?

私はこれまで多くのジュニアテニス選手へのメンタル指導の中で、大きく2つの理由があると考えています。

  1. 不安や緊張のために、本来の力が発揮できていない
  2. 試合で勝ちきるための準備ができていない

このページでは、実力はあるのに、なぜか試合でそれを発揮することできず、低迷している中高生のテニス選手、そしてその保護者に向けて、大事な試合で勝ちきるためのメンタルトレーニングと、その方法や種類、始めかたについて解説しています。

中学生高校生テニス選手の置かれた状況と特徴

個人的には、ジュニアテニスのポイント制度というのは良くできているなと感心します。

同じレベルの選手が切磋琢磨するなかで、選手本来の潜在能力は引き出されるものだし、どのレベルにいても「あともう一段!」という目標をもって努力できるからです。

反面、直接的に勝ったり負けたりを繰り返していくので、負けが続くと、自信を失い、思いきったプレーができなくなり、また負けるという悪循環に陥りがちです。

ゴルフや、チームスポーツであれば、負けるにしても、ただ単に調子が悪くて負けたと思うことができたり、チーム全体として負けたと思うことができますが、テニスでは心理的な負担が大きくなりがちで、それがまたスランプや低迷の原因になります。

連敗が続くと誰しも、

  • また負けてしまうのではないか?
  • 格下に負けたらみっともない…
  • 大事なところでダブルフォルトしたらどうしよう…
  • いつも最後でミスをしてしまう

こんな考えに少しずつ支配されるようになりがちです。

そして、そうなると、不安と緊張のために、前夜から眠ることができなくなったり、試合前にやたらと心拍数が上がったり、胃腸の調子がおかしくなるようになります。

私のところに相談に来たジュニア選手の中にも、やはり同じような状態に陥ってしまっていた選手がいました。ちょっと信じられないかもしれませんが、全中(全国中学生テニス選手権)で全国優勝したこともある男子高校生は、高校に入ってから調子を崩し、一時、イージースマッシュが決められない状況に陥っていました。

格下の選手に1セットも取れないと恥ずかしい、そんなことを考えてしまうようになり、プレーの質がどんどん下がってしまったそうです。

どんな実力者も、ひとつ歯車が狂って悪循環に陥ると、それまでの自信なども吹き飛んでしまうものなのです。

本来の力を発揮するために大切なのは「平常心」

このような不安や緊張の悪循環によって、本来の力が全く発揮されない状況に陥っている中高生のテニス選手にとって、まず必要なのは平常心です。

しかし、その平常心でいることが難しい。頭では平常心が大事なのは分かっているのに、試合に入るとそれができなくなるのです。平常心は頭でわかっているだけではだめなのです。

私が強く推奨しているのは心の状態として平常心を作ることではなく、体の状態としての平常心であり、その状態を再現するためのレゾナンス呼吸法です。

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このメンタルトレーニングは、平常心を、単なる「思考法」ではなく、トレーニングで作り出せる「技術」としています。そして、技術は地道な練習で鍛えられるので、徐々に大事な場面で平常心を再現できる確率は高くなります。

トップアスリートであれば、このような地道な練習は厭わないので、相性も抜群です。私が指導したジュニア選手の多くが、平常心の作り方を理解した上で、地道に練習を重ねて、少しずつ本来の自分を取り戻していきました。

具体的なトレーニング方法は、上の2つの記事で紹介していますので、じっくりと読んだ上で、取り組んでみてください。

また、無料オンライン登録で入手できる拙書「ここ一番に強い自分は科学的に作り出せる」に詳しく説明しています。

 

誤解しないで欲しいのは、毎日のレゾナンス呼吸は、あくまでも基本。つまりは素振りの練習のようなものです。

大切なことは、まずは基本のレゾナンス呼吸法を正しく習得した上で、実際の練習や試合の中で、実践的に使っていくことです。

もちろん、「5秒で吸って、5秒で吐く」というゆっきりとした呼吸はなかなかできませんが、試合の前、サーブの前、レシーブの前、チェンジコート、ボールを拾いにいくときなど、呼吸をコントロールする時間を少しでも持つことは、心のコントロールにつながります。

前述のイージースマッシュが決められなくなったトップレベルの高校生には、ハイボールが上がったら、まず一息フッと吐いてから、スマッシュすることを提案しました。

そして、それだけでイージースマッシュのミスはすぐに改善しました。ミスの原因はハイボールが上がったときに余計なことを考える時間があるからなので、それを呼吸で埋めることができるからです。

これまで指導した多くのジュニア(中高生)たちは、競技種目に関わらず、この呼吸法だけで低迷やスランプから回復していきました。

これまであれだけ悩んでいたのに?という選手も少なくありません。

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今ではアスリートの間で、ヨガや瞑想も流行っていますが、レゾナンス呼吸法は、より簡単で、ほぼ同じ効果が期待できる精神修行です。しかも、呼吸が上手くできているかどうかがわかるテクノロジーまであるのですから、これを利用しない手はありません。

苦手意識に負けないで、試合で勝ちきるための準備の仕方

ひどい悪循環に陥ってしまうのとは別に、他にも、大事な場面で勝ちきれない悪循環に陥るパターンがあります。それは特定場面で苦手意識を作ってしまうことです。

例えば、左利きの選手や、特徴あるプレーをする選手に対してとか、第一セットを取っても、第二セットを落とすと、そのまま負けてしまうとか、勝率が著しく下がったりということです。

少し前の話ですが、名門中学に在籍し、県でベスト8レベル、関東大会出場を目指していた女子選手が入塾しました。入塾のきっかけは、4-2の状況から逆転負けが続いたこと、さらには同じ学校の格下の同級生との試合で、また4-2から逆転されてしまったことから、4-2の状況に苦手意識を持ってしまったことでした。

4-2までリードできる力はあるので、試合の「入り」はそれほど不安はないようでした。しかし、4-2でリードしていることを意識するとたんに、急に体の動きが悪くなり、ミスが出たり、思いきったプレーができなくなるそうなのです。

その女子選手に、4-2からの逆転負けが続いたあと、「次の試合に向けてどんな準備をしているか?」と尋ねたところ、「特にいつも以上のことはしていない」とのことでした。

「次の試合で、4-2の状況になったことを想定して、どうやって勝ちきるかを考えていないの?」と尋ねたところ、「その状況を考えるのが怖いので、考えていない」とのことでした。

「それではもし本当に4-2になったら、どうするの?」と尋ねたところ、「そのときはそのときで対処する」とのことでした。

うーん。。。

関東有数の名門中学の生徒なので、自分なりに考えているのかなと思いましたが、何も考えていないようです。正直、「考えるのが怖い」というのが本音なのでしょう。

よくよく考えて欲しいのですが、冷静になっている今、その対策を考えることができないのであれば、4-2になったときに良い対策が浮かぶ可能性はないのです!

良く聞くアドバイスに、「失敗することを考えると(イメージすると)失敗する」というのがあります。だから、成功すること、勝利することを考えなさい、と。

実はこれは都市伝説です。心理学の研究では、失敗や不安を事前に考えておくことは、結果的に、本番では成功しやすいということがわかっています。また反対に、成功ばかり考えると、正しい努力や対策をしなくなるので、実は成功する確率が下がることもわかっています。

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ですから、4-2の状況に対して苦手意識を感じているのであれば、その状況をどうやって乗り切るかを、事前に、冷静に、時間をかけて考えて、さらにリアルにイメージを繰り返していくことが、望ましい準備といえます。

ただ単に成功をイメージするのではなく、現実的に考えることが大事です。その意味では、4-2になったときに不安が沸き起こります。それを呼吸やイメージで上手くコントロールしながら、ポジティブなひとりごとを言ったり、決めていたルーティンをしっかりやりきるなどを考えて、イメージで繰り返しておくのです。

こういったメンタルトレーニングをメンタルリハーサルといいます。

メンタルリハーサルで本番力に差をつけよう!本番で力を発揮するために、最も大切なイメージトレーニングが<メンタルリハーサル>です。この言葉のとおり、本番を頭の中で何度もリハーサルするのです。このメリットは、そういった状況に脳を慣らしておくことで、体が勝手に動いてくれる状態を作ることです。...

メンタルリハーサルが、勝率を少し上げる!そのぎりぎりの試合の中で選手は成長していく

ただ、メンタルリハーサルは苦手意識の対処のためだけのものではありません。大事な試合であれば、必ずやる癖をつけたいものです。

私はこれまで多くのアスリートを指導してきましたが、その経験の中で気づいたことは、多くの選手は普段は血の滲む努力をしているにもかかわらず、本番(試合)に向けての準備が不足していることでした。

それはテニスでも、野球でも、ゴルフ、格闘技でも同じです。

普段、やるべきことをやっていれば、それが試合で発揮される、と考えるのでしょう。

しかしそれではもったいないのです。それはある程度までは本当ですが、同じレベルの人間が切磋琢磨している中では、次の試合への準備の仕方が、勝率・打率などに差が出るのです。

10回対戦して、10回勝てるレベルの相手との試合では、わざわざ準備する必要はないです。しかし例えば、10回対戦して5回勝てるレベルの相手との試合では、どれだけその試合に向けて具体的にしっかり準備できるか、想定できるか?

そういった想定を繰り返し頭の中で行うのがメンタルリハーサルです。その想定の精度や深さがあればあるほど、勝率は6割に近づいていきます。

そして、その1割の差が大きいのです!

なぜなら、こういったぎりぎりの試合の中での勝利は、力を出し切って勝ち取ったものであり、選手に自信をもたらすだけでなく、選手の潜在能力が引き出されるし、次の試合のためにさらに努力しようと思えるエネルギーを生み出すからです。

私はこれまで長年、多くのアスリートや音楽家と接して、彼らがどんなときに成長・上達するのかを、興味を持って研究、観察してきました。

その結論は、どんなときでも真の上達は、時間を忘れて没頭した瞬間の中にあるのです同格や格上の相手との「ぎりぎりの戦い」を勝ち抜くには、フローという時間感覚がゆがむ集中状態に入る必要があります(テニスではゾーンという言葉も使われます)。

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こういったフロー(ゾーン)に入る機会が多ければ多いほど、人は成長するものです。

フローに入る条件は分かっており、自分の能力と、挑戦の難易度のバランスが取れているときです。つまり、「簡単すぎてもダメ、難しすぎてもダメ」、同格か少し格上の相手との試合がそれにあたるのです!

日本はまだまだ精神論が主流。しかし欧米ではメンタルトレーニングを既に取り入れている

私の理解では、まだまだ日本のテニス界では精神論が主流で、メンタルトレーニングに取り組んでいるジュニア選手は少ないように思います。

しかし、欧米は進んでいます。あの錦織圭選手が留学していたIMGアカデミーでは、週に1回のメンタルセッションがあり、若かりし錦織選手も主にイメージトレーニングをやっていたそうです。

テニスという競技は運動量も多く、1日でできる練習は限られます。もちろん練習はできる限りやらないといけませんが、やり過ぎると怪我や不調の原因になりかねません。

だからこそ、時間を上手く利用して、メンタルトレーニングに取り組むことで、そこから得られるメリットは少なくないのです。

メンタルトレーニングというと、成功イメージやプラス思考などが思い浮かぶと思いますが、これらは実際にはメンタルトレーニングのひとつであり、確かに大事なことです。

しかし、真剣にテニスで上を目指している中高生が取り組むべきものは、先ほど説明したメンタルリハーサルなのです。なぜなら、自信も、プラス思考も、ぎりぎりの戦いに勝利することで自然に身につくからです。

不安や緊張で、まず自分の力が発揮できない状態に陥ってしまっているのであれば、まずは平常心=呼吸のトレーニングから始めましょう。そして、徐々に自分の力が発揮できるようになったところで、メンタルリハーサルを始めるといいでしょう。

そしてこれは実際に私が個人指導で行っている順番です。

先ほど紹介した全中(全国中学生テニス選手権)を制覇したことのある男子選手も、まずは呼吸法のトレーニングから始め、次に試合でどのように呼吸をコントロールできるかを教えました。メンタルリハーサルを教えたのはその後です。

しかし彼は、本当に短い期間でメンタルリハーサルを自分のものにしていきました。入塾3か月経たない頃の海外遠征、しかも準決勝では、試合前にメンタルリハーサルで想定したとおりに相手がショットを打ってきたので、心の中で「あざっす」と思いながら余裕でリターンを何度も決められたそうです。

また強敵との試合においても、これまで強い球を返されると、むきになって強い球を返してしまったことが多かったが、メンタルリハーサルで想定したとおりに、落ち着いてコートを広く使うことができたり、数少ない浅い球だけをしっかり狙うということができたと報告をくれました。

なお、イメージやメンタルリハーサルの能力は、基本的には、テニスの能力に比例しているので、中高生の誰でもこんなに簡単にものにすることはできませんが、技術ですから、必ず地道なトレーニングで上達します。諦めないで続けて欲しいと思います。

繰り返しになりますが、実力差が少ない中で大勢が競い合っているテニスではメンタルトレーニングはとても重要です。なぜなら、その小さい差を埋めることができるからだけでなく、ぎりぎりの戦いに勝利することで、潜在能力と自信を引き出すからです。

反面、大事な場面で、僅差の試合で、力を出し切れないと、ポイント上乗せができず、同じレベルで停滞してしまうし、それどこか自信を喪失し、今まで維持できていたレベルからも滑落してしまうこともあります。

だからこそ、メンタルリハーサルで自分の力を着実に発揮できるようになることが大事です。とりわけ、試合の入り方、ピンチのしのぎ方、クロージングが大事であり、そこを事前にメンタルリハーサルでどう準備しておくかが勝敗を分けることになります。

成功イメージやプラス思考も大事だけれども、だからこそ、私は平常心を作る呼吸法と、メンタルリハーサルを強く勧めます。

自己流メンタルトレーニングの限界と問題点。成長機会を逃し、あとで後悔しないために

中高生のテニス選手がスランプを克服し、もう一段上のレベルにチャレンジできるようになるための私のメソッドを、ここまで惜しみなく公開してきましたが、如何でしたか?

これまで多くのジュニアテニス選手への指導経験の中で培われたノウハウなので、これを読んだだけで効果があるように感じられた方も多いかもしれません。

しかし、誤解しないでいただきたいのは、呼吸法やイメージを「自己流で」やって効果が出るのは、おそらくごく一部の選手だけです。

多くの選手は、それをさらっとやってみて、すぐに効果が出ないと諦めて辞めてしまいます。なぜなら、世の中には無数の情報が溢れていて、なかなか一つの正しい方法を信じて、続けることができないから。

とりわけメンタルのようなものは、目に見えないのでなおさらです

だからこそ個人指導が大事なのです。個人指導であれば、選手それぞれの理解度や習得度に応じて、試合でどのように使ってみるのかを指導できるからです。そしてそれが上手くいったのか?上手くいかなかったとしたら、次はどう改善できるのか?

こういったことをじっくりと話し合って、次の試合に準備することができます。

このページを読み込んで、自分たちでメンタルトレーニングに取り組めば、全くお金はかかりません。しかし、正しく習得できなければ、それは成長という機会や時間を損失したことになります。

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