ゴルフイップスの克服 その原因分析と対策提言

  • ショートパットで手が動かなくなる
  • ダウンスイングに入ると、体が嫌がって勝手に止めてしまう
  • アプローチだけ勝手にパンチが入り、コントロールできない

イップスとは「特定の場面でだけ、体が固まったり、おかしな動きをする」症状のことです。パターイップスがよく知られていますが、ドライバーでもアプローチでもイップスは起こります。

イップスになってまでゴルフをしたい人というのは、熱心にゴルフに取り組んでいたアスリートゴルファーだけです。しかし今は、イップスのせいでゴルフが辛くて仕方がない状態でしょう。

このページは、私が海外の文献を参考に研究し、イップスに関して理解したことについて、時間をかけてまとめたものです。

また、本物のイップスに苦しむプロゴルファーや上級者との対話やラウンドを通して考察した、本物のイップスへの対策提言です。

非常にボリュームも多く、専門用語も出てくるので、少し難解なところもありますが。できるだけわかりやすくまとめたつもりです。

楽して簡単にイップスを直したい人ではなく、本気でイップスの克服を目指しているゴルファーは、ぜひじっくりと読み込んでください。

まずはイップスの原因分析から入りたいと思います。

ゴルフイップスの原因 3つの主要タイプ

典型的なイップス「特定の場面でだけ、体が固まったり、おかしな動きをする」という症状が起こる原因には、主要なものは次の3つがあると考えています。

  1. 委縮の条件反射型(トラウマ型)
  2. マイナスの自己暗示型
  3. メンタルモデルの神経不全型

まずは、それぞれについて詳しく解説していきます。

1. トラウマ委縮の条件反射型

3つの要因の中でも、トラウマ萎縮の条件反射型こそが、ほぼ全てのゴルフイップスの主たる要因と考えて間違いありません。

書籍や雑誌記事で、イップスで苦しんだ経験のあるプロアスリートの話を読むと、やはり何らかの記憶に残るトラウマ事件があります。

阪神タイガースの藤波晋太郎投手は、広島の黒田投手への頭部への投球を強く叱責されたことであったり、森田理香子選手は、3Tour選手権でのアプローチミス(シャンク)を観客に笑われたことであったりです。

あなたにもあるのではないでしょうか?

トラウマのメカニズムは、ここ10数年でよく知られるようになりました。脳科学の発展で、脳の奥のほうにある「へんとう体」の働きがよくわかってきたからです。

へんとう体は、過去に起きたさまざま感情を覚えておくための部位で、簡単にいえば「感情記憶」を司っています。その中でも主たる役割が恐怖記憶です

へんとう体は、過去の恐怖刺激を感知すると、無意識に瞬間的に体がストレス反応を起こします。つまり、トラウマというのは、このへんとう体にある「恐怖記憶」のことなのです。

例えば、過去に犬に追いかけられて怖い思いをしたことがある人は、後日、似たような犬を見るだけで、へんとう体は無意識に反応し、体は硬くなったり、震えたりします。

ゴルフでいえば、右に池があるホールでは、いつもダウンスイングで体が止まって引っかけてしまったり、逆に体が開きすぎて、結局池ポチャしてしまうというのも、軽度のトラウマといえるのです。この原因は、ダウンスイングの瞬間に、筋肉の一部がストレス反応のひとつとして硬直してしまうからです。

無意識に起こるので、非常に厄介ではありますが、トラウマ反応が起こるメカニズムは、今ではほぼ解明されているので、そのメカニズムに基づいて正しくトレーニングをすれば、薬に頼らずに、トラウマを弱くしていくことができます

ただし、後述しますが、トラウマが複雑化している場合、それなりの時間がかかることもあります。

繰り返しになりますが、このトラウマが引き起こす条件反射型のイップスが、全てのイップスの基本メカニズムであり、出発点といって間違いないというのが、今現在の私の見解です。そして、そこから次のようなメカニズムが「上乗せ」されたりして複雑化していくのです。

2. マイナスの自己暗示型

「あなたの体は岩のように固くなる!」といわれて、2つの椅子の間に棒のように横たわるような催眠術ショーを見たことがありませんか?ほとんどの場合、それはやらせではなく、本当に催眠にかかっているのです。

私たちの脳は、どうも、こういった暗示や催眠にかかるようになっており、ちょっとにわかには信じられないようなことを起こります。レモンは甘い、と催眠をかけられた人は、つばを出すことなく、「甘くてメロンみたい」と、そのレモンを食べることができるのです。

「自分の手はパットのときに動かない」と強く暗示をかけていると、本当に動かなくなっても全く不思議ではありません。

この類の自己暗示は、風水やお守り、パワーストーンや磁気ブレスレットを自分で繰り返し購入する人にかかりやすいものです。いつもはプラスの自己暗示をかけているのですが、イップスに関してはマイナスの自己暗示をかけてしまいます

自己暗示は、競技レベルにかかわらず、かかるので、プロや上級者でも、自己暗示で体が動かなくなることはあります。

このような自己暗示型のイップスの人には、暗示催眠系、スピリチュアル系のメンタルトレーニング・セラピーは最大の選択肢です。

実際、イップス治療でネットで知られている某セラピストは、暗示催眠系のメソッドを使っています。「無意識に働きかける」というような表現を使うセラピストは、このタイプです。即効性のある方法であり、いとも簡単に克服できてしまうこともあります。

また手技や電気治療でイップスが短期間で治ると謳うセラピーもたまに見かけますが、それもほとんどの場合、暗示催眠が主効果と考えて良いでしょう。

3. メンタルモデルの神経不全型

動いていないエスカレーターに乗ろうとするときに、勝手に体を前傾させるので、少しカクンとなりませんか?これは、私たちの脳が、これから起こることに対して身体反応を自動調節しているからです。

メンタルモデルとは「環境を瞬時に判断し、複雑な行動を制御するための一連の脳内イメージ」です。動いていないエスカレーターへの対処も、ひとつのメンタルモデルの例です。

精密なゴルフスイングのメンタルモデルは繰り返しの訓練によってできあがるものであり、初級者にはそのようなメンタルモデルが強固にできていないので、これが原因でイップスは起こりません。

しかし、プロや上級者は、パッティングの際に、距離やライ、傾斜などのグリーンの状況などを瞬時に判断し、望ましいパッティングをするためのメンタルモデルがあり、そのメンタルモデルが、その次に行う複雑なパッティング動作を自動的に制御するのです。

こういったメンタルモデルが確立されている上級者の特徴として、やろうと思ったことが「違った!」というときに、瞬間的にその動きを修正する能力が備わっています。例えば、ダウンスイングに入ったときに、「ひっかけそうだ!」と感じると、瞬間的に右手を離したりするといった動作です。

しかし、なんらかの理由で、このメンタルモデルの一部が欠損し、その制御ができなくなります。ほぼ自動的にできたことがスムーズにできなくなるのです。それどころか、無意識に腕の動きを止めてしまうのです。

これこそがイップスは上級者にしか起こらないといわれる所以です。

パターを長尺に変えたり、グリップを変えることで、イップスがなくなるのは、この欠損したメンタルイメージを使わないで済むからと考えられます。

トラウマの条件反射型のイップスも、無意識に体が反応するものですが、メンタルモデルの神経不全型も、また別のメカニズムで無意識に体が反応するものです。つまり、無意識の反応が二重に起こっている可能性が高いです。

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ゴルフイップスを深刻化させる問題行動

イップス症状を抱えてしまったゴルファー(プロや上級者)の中には、イップスを克服した先輩プロの教えなどから、「強い気持ちで乗り切る」という対処法を選択することが少なくありません。

軽度のイップスの場合、それで乗り越えられることもあるのも確かですが(自己暗示が上手くいったケース)、反対にマイナスの自己暗示をかけてしまい、さらに症状を深めてしまうことも少なくありません。

例えば、ドライバーイップスを抱えている人が、コース上でイップスを連発した後に、練習場に直行し、ストレートな球を何発も打ち、「練習場では打てるんだよ!」ということを繰り返していくと、知らず知らずのうちに「練習場では打てるのに、コースでは打てない」というマイナスの自己暗示や思考を強化し、イップスをより複雑にします

また、「今日は絶対に気持ちで負けない。どんなことがあっても自分を信じて、思いきりボールをヒットする」と誓ってティーグラウンドに立つものの、結果はチーピンとなると、「もう絶対に上手くいかない」などと、同じくマイナスの自己暗示や否定思考を強化します。

長くイップスを抱えているゴルファーの場合、こういった様々なことを繰り返しているので、症状がより深刻で、複雑になっているのです。

イップス症状が起きたとき、それでミスショットが出たときに、一番望ましいのは、感情的にならず、淡々とやり過ごすことなのですが、それはイップスという問題行動を複雑にしないためでもあるのです。

ゴルフイップスを克服するということ

イップスで悩むゴルファーは、昔のように不安や迷いもなく、体が思う通りに動かせるようになりたいと願っており、それが克服することだと考えてしまいます。

しかし、実際のところ、一度自分でイップスといえるほど深い症状に陥ってしまった場合、それが全くなかったことのようなレベルまで改善することは、正直少ないですし、非常に時間がかかります。

短時間でほぼ症状が消える場合があるとすると、上記で紹介したようなアベレージゴルファーで、自分で暗示をかけてしまっていた場合だけです。

これは、私があがり症で悩む演奏家や社会人を教える時も同じです。本番で全く「あがらなくなる」ということはほぼ起こりません。あがり症を克服するということは、まずはあがり症状(震え・不安など)が出ても、なんとかパフォーマンスを発揮できる状態に戻すことです。あがっても、なんとかパフォーマンスができるようになることを繰り返していくことで、あがり症状は少しずつ消えていきます

ゴルフイップスも同じことが言えるのです。ゴルフイップスを克服するとは、イップス症状が全くなくなるものではなく、イップス症状を減らしながら、新しい技能や経験でそれを補いながら、パフォーマンスを出していくことなのです

ただ、正直なところ、私の経験からは、(特に上級者の)ゴルフイップスの克服は、これまで見てきたとおり、非常に複雑な要素の組み合わせであり、あがり症の克服よりも時間がかかる場合がほとんどです。

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ゴルフイップスを克服するために重要なこと

イップスは複雑な原因が絡まって脳に刻まれており、何かひとつのきっかけで解消することは稀で、本来は、少しずつ症状を緩和することで克服していくものです。

そのプロセスは一定の時間がかかるものであり、一時的に改善していると思えていても、突然悪化したり、再発したりすることも頻繁にあります。そういったときにも、自分の感情をコントロールするスキルや知識をしっかりと持っておくことが大事なのです。また、そのようなときに、信頼できる専門家のサポートやアドバイスも大切になります。

「今やっていることが正しい」「方向性は間違っていない」

長くイップスに苦しんでいる人であればあるほど、このように考え続けるのは決して簡単ではありませんが、浮き沈みがあったとしても、地道に続けることが、結果的に克服へとつながるのです。しかしこれは、ゴルフの上達にも同じことが言えるのかもしれません。

もうひとつ大事なことは、まずは基礎を固めながら、少しずつステップを重ねていくことです。私が考える基礎というのは、気分や感情をコントロールするためのリラクゼーションスキルです。具体的に呼吸法、瞑想、イメージ法です。軽度のイップスやトラウマであれば、これだけで改善していくことがあります。

ところが多くの場合、こういった基礎に取り組むことなく、本で読んだ知識や、克服した人からのアドバイスといった「応用」に手を出してしまいます。経験不足のカウンセラーやコーチも同じ過ちを起こしがちです。

こういったアドバイスは、それ自体は間違いではないのですが、気分や感情のコントロールといった基礎ができていないと、上手くできなかったときに、それまでの成果を感情的に台無しにしてしまい、次のステップにつなげることができなかったり、一時的に再発したことで諦めてしまったりするものです。

石井塾では、この基礎を短期集中コースでしっかりと取り組んでいきます。ここまでやるの?というくらい、まずは呼吸法をしっかりと学習します。

そのうえで、イップスを改善、克服するために必要な「計画→実行→確認」(いわゆるPDCサイクル)を作り上げて、回していくのです。ここでは書ききれませんが、トラウマ型やメンタルモデル不全型にも効果があると考えられているメソッドを、いくつか試していきます。そして、それを実際のコースで実行し、効果を確認し、継続して行うかどうかを決めていきます。こういったサイクルを作り上げるのです。

石井塾では、過去10年以上にわたり、主にトラウマ型の問題を抱える、様々な人々をメンタルトレーニング指導してきました。主にあがり症やパニックです。人前で話すことへの恐怖、特定の上司に対しての恐怖、本番での演奏に対しての恐怖、飛行機に乗ることへの恐怖など。

これらのトラウマ型の恐怖症も、症状が深刻であればあるほど、回復に時間はかかりますが、PDCサイクルを作り上げた人のほとんどが、それを改善、克服できています。

この長い文章を読んで、イップス克服の可能性を感じた方は、石井塾のゴルファー向け「フローゴルフ」コースへの入塾を検討ください。まずは有料のお試し入塾相談からとなりますが、お試し相談では、詳しい話をお伺いして、イップス症状がどれだけ複雑化しているか、どのタイプが強いかどうかなどを判断したうえで、改善可能性を探ります。

あなたの努力と時間を無駄にせず、一歩一歩、少しずつでも前に進めるアプローチで、イップス改善に向けてあなたを支援します。

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