石井塾では、塾生全員に、大事な場面でも、心拍を望ましい状態にコントロールできるようになるための呼吸法を指導しています。
しかし、中には、「リラックスしよう、落ち着こう」と考えながら、呼吸法を行ってしまう人がいます。
呼吸法の実践中、このように考えることはご法度です。
どんなに呼吸法を練習したとしても、大事な試合や本番前には、緊張や心拍の乱れを完全に取り除くことはできません。
体が緊張したり、心拍が乱れていても、それを否定したり、悲観したりしないこと。
そうはいっても全く無視して良いということでもありません。
じゃあどうすれば良いか?
「ああ、今日は乱れているなあ」程度に、その事実を客観的に意識するだけで良いのです。そこに感情的な意味合いや、不調の理由探しをしないのです。
そして、ただ静かに、呼吸やイメージを続けるのです。
これまでしっかりと練習してきた技術や能力は、多少の緊張があっても、十分に力を発揮することができます。
それどころか、適度な緊張があることで、より高いパフォーマンスができることがあります。
しかし、「リラックスしなければいけない、落ち着かなければならない」と考えることは、まず確実に、あなたのパフォーマンスを阻害します。なぜなら、そのような思考は、心拍を乱し、肩や首の筋肉を固くするからです。
ですから、本番前で大切なことは、ただ静かに、これまで丁寧に繰り返し練習してきた呼吸法やイメージを、実践するだけで良いのです。
この境地に達するために、私は塾生に、毎日必ず呼吸法の練習を促しています。
というのも、呼吸法を毎日、定期的に実践していると、調子のよい日も、悪い日もあることに気づきます。
鈍感な人でも、エムウェーブを使うと、否が応でも気づきます(笑)。
調子の良い日は問題ありませんが、調子の悪い日は、やけに呼吸の重さや、体のかたさ、心拍の鼓動の乱れが気になることがあります。
このときこそが、本番で「ああ今日は乱れているなあ」という客観的な境地にたどり着くための、本当に良い実践練習となるからです。
なかなか最初のうちは、色々と考えてしまうこともありますが、少しずつ客観性が鍛えられていくのです。
そして実際に、その客観性は、背内側前頭前野(はいないそくぜんとうぜんや/DMPFC)という脳部位が強化されるほどに高まることがわかっており、これが呼吸法や瞑想の長期的効果の裏付けのひとつとなっています。