先月開幕したラグビーW杯。初戦でいきなり、強豪・南アフリカに勝利し、日本中を驚かせました。私も、再放送で試合を見ましたが、たまたま勝ったというものではなく、勝利の執念が本当に強く感じた試合でした。
その勝利の立役者が、五郎丸選手です。五郎丸選手はキッカーであり、日本代表の勝利は、ペナルティーキックで得点を積み重ねられたことが大きかったのです。
南アフリカ戦の勝利の後、多くの番組で、五郎丸選手が取り上げられました。そして、当然、五郎丸選手が行う、とても印象的なキックの前にやる「儀式・ルーティン」も詳しく報道されました。
報道によると、五郎丸選手は、ジョーンズ監督のアドバイスで、プロのメンタルコーチの指導で、キックの前に必ず行うルーティンを徹底的に作り上げたのだそうです。ルーティンで、蹴るまでの動作、そして時間を毎回同じにすることで、余計なプレッシャーや迷いをはねのける効果があります。
手と指を合わせて、祈るようなポーズを取る場面がありますが、あれは専門的には「センタリング」といわれるテクニックで、よく使われるものです。体の中心に意識を向けることで、余計な思考を抑制し、ストレスを軽減できる効果があります。というのも、私たちは、体の中心に、エネルギーのようなものを感じることが多いからです。炭田を意識するテクニックは、みなこれですね。
塾生はわかると思いますが、石井塾で教えているレゾナンス呼吸法にも、センタリングは含まれています。
正しいルーティンは本当に重要なので、石井塾でも、ゴルフや射撃など、キッカー以上に、ルーティンが大事な競技に取り組んでいる選手には、私も徹底してルーティンを教えています。ルーティンをつくり、実践していくことも大事なメンタルトレーニングです。
その中心となるものが「呼吸」です。テニスであれば、サーブのとき、レジーブのとき、コートチェンジのとき、ミスでポイントを失ったあと、それぞれの局面でそれぞれ呼吸を意識したルーティンを作ります。どのタイミングで吸ったり、吐いたりするのか、そして、どこをどのように意識しながら行うのか、一緒に考えて、オリジナルのものを作り上げています。
呼吸は「見えないので」、あまり注目を浴びませんが、私はルーティンのなかで最も重要な要素であると考えています。ルーティンで余計な思考を排除し、リズムを作り、「考えないで、感じる」の先に、ゾーンは待っているものです。