若手競輪選手のNさんは、緊張からか、レース前に、必ずお腹がゆるくなり、毎回30分以上もトイレにこもってしまうことが続いていて、それが悩みで、入塾相談にやってきました。
競輪選手はいかついイメージがありましたが、とても爽やかな好青年で、学生競技のときから、もともとプレッシャーにはあまり強くない方だったそうです。
競輪界では、若手の選手が、同郷の先輩選手を立てなければならないという不文律があり、レースが開催されている競輪場では、常に先輩に気を使わなければなりません(若手選手がプロデビューした後に学ぶ大事なことは、先輩への「お茶の入れ方」だそうです)。
レースのプレッシャーだけでなく、そういった人間関係のストレスが原因で、本番直前に過度に緊張し、お腹が緩くなってしまっていたのでしょう。このような症状を、過敏性腸症候群(IBS)といいます。
また、Nさんの話では、競輪選手の多くは、レースで力を発揮するために、カフェインの錠剤を、レース前に服用することが多いそうです(カフェインは、コーヒーなどにも含まれており、ドーピングとはならないそうです)。
ご存じの通り、カフェインは興奮性の物質であり、たとえば睡眠前に取り過ぎると、神経が過敏になり、寝つきが悪くなります。反対に、朝にコーヒーを飲めば、気分がしゃんとするのです。
競輪という競技特性を考えると、カフェインをレース直前に取ることは、興奮を促し、さらなる瞬発力を生むという意味では、悪くないものかもしれません。
しかし、それはNさんにとっては「もろ刃の剣」だったのです。
というのも、前述のとおり、Nさんは、もともと緊張から、お腹がゆるくなりがちでした。そこにカフェインを摂取すれば、神経系は活性化し、心拍増加や胃腸の過興奮につながります。
つまり、実は、カフェインの摂取で、知らず知らずのうちに、その症状を自分で悪化させていたのです!そしてそれが、パフォーマンスの低下につながっていた。
この話を入塾相談で聞いた私は、(そのほかに大きな問題もないことを確認して)、カフェイン摂取をやめて、レゾナンス呼吸を中心としたメンタルトレーニングを丁寧に続ければ、すぐにこの問題は解決できる可能性が高いことを伝えました。
というのも、これまで過敏性腸症候群を抱えいていた多くのアスリート、受験生、社会人を指導してきましたが、100%とはいかないまでも、かなりの確率で改善できていたからです。
そして、実際、入塾後、2週間くらいで、レース前にお腹が痛くなることはなくなりました。また、毎レースごとの不安がなくなり、パフォーマンスは上がりました。
本人にとっては、大問題だったでしょうが、私にとっては、非常に改善可能性を予測しやすいケースでした。
この競輪選手の話は、実は少し前の話ですが、ここ最近で入塾されたアスリートも、同じような問題を抱えていたので、思い出したのです。
さすがにカフェインを錠剤で飲んでいるひとは多くないと思いますが、コーヒーの飲みすぎでも、同じような問題が起こりえます。
コーヒーを毎日10敗も飲んでいて、お腹が緩い、胃がやられている、毎日疲れている、といった人は要注意です。