あがり症の克服

なぜあなたはあがるのか?プラス思考では極度のあがり症を克服できない理由

あがり症や緊張はストレス反応

あがりや緊張とは何でしょうか?どうして私たちは緊張するのでしょうか?

この問いを正しく理解するカギとなるのが「ストレス」です。ストレスは、「緊張」そして「あがり症」や「平常心」に深く関わりがあります。そこでまず簡単にストレスについて解説したいと思います。

あなたにとってのストレスとはどんなことでしょうか?人前でのスピーチ、試験や面接、わがままな新入社員、気難しい部長、残業や休日出勤、期限の迫ったノルマなどでしょうか?CapD20150517

これらは、心理学用語では、ストレスではなく、ストレッサーと呼んでいます。ストレッサーというのは「外的要因」という意味で、まさにプレッシャーのことです。

右図で説明すると、ボールが、ストレッサーであり、プレッシャーです。

そして、本来の意味でのストレスとは、ストレッサーによって引き起こされるスポンジの「歪み」のことであり、「ストレス反応」と呼ばれるものです。

つまり、緊張とは、プレッシャー(ストレッサー)によって引き起こされるストレス反応です。本番で力を発揮できないあなたの場合、プレゼンや入学試験というストレッサーによって、緊張というストレス反応が起きてしまっているということです。

さらに詳しく説明すると、プレッシャー(ストレッサー)によって引き起こされるストレス反応は大きく2つに分けられます。それが、「心理反応」と「生理反応」です。

 

ストレスの心理反応
  • 不安で仕方がない
  • 落ち着かない
  • 失敗したくない
  • 逃げ出したい
ストレスの生理反応
  • 心臓の動悸
  • 頭に血が上る
  • 冷や汗
  • 体が震える
  • 目が充血する
  • 顔が引きつる

さて、ここで質問です。「緊張」とは、一体どちらのストレス反応でしょうか?

心理反応でしょうか、生理反応でしょうか?

答えは両方ですね。国語辞典をひも解いても、緊張とは「心やからだが引き締まること。慣れない物事などに直面して、心が張りつめてからだがかたくなること」(大辞泉)とあります。

あがり症や緊張の度合を決めるもの

普段あまり意識して考えたことはなかったと思いますが、あがりや緊張というのが、プレッシャーに対する「心理的かつ生理的ストレス反応」であることがわかっていただけたかと思います。

それでは次に、「私たちが緊張する理由」ではなく、「私たちが緊張しすぎる理由」とは何でしょうか?結論から言えば、それはストレスの生理反応が過度に起きてしまっているからです。

プレッシャーがある以上、多かれ少なかれ、緊張は必ず起こるものです。しかし、過度の生理ストレス反応が起きてしまうと、これまで普通にできたことができなくなってしまい、失敗してしまうのです。

s-CX054_L例えば、草野球でのピッチャー経験者であれば、草野球場では落ち着いてストライクを投げることはできます。では、いきなり超満員の甲子園球場で投げることになったらどうでしょうか?

恐らく、緊張のあまり、手足が震え、心臓がドキドキ、冷や汗ダラダラ…ストライクどころか、まともなボールを投げることすらできないでしょう。

想像して欲しいのですが、あなたは、結婚式のスピーチで、心臓もドキドキしていない、手足も震えていないのに、頭だけが真っ白になって言葉がでないといったことがありえるでしょうか?

もし、体が震えるなどの生理ストレス反応が起きていなければ、落ち着いて冷静に、用意したスピーチができるはずです

同じように、草野球のピッチャーも、足の震えや心拍増加、手汗などがなければ、超満員の甲子園球場でも、ストライクを投げることができるでしょう。

つまり、大きな生理ストレス反応が起きていなければ、私たちは過度に緊張することはないのです。このように考えると、あがりや緊張の度合は、心臓のドキドキや、体の震えなど、あなたにどれだけ大きな生理反応が出ているかで決まると言えるのです。


ストレスの本質は「戦うか、逃げるか」

これまでのところで、「緊張」や「不安」といった感情は、ストレス反応から生まれているということ、そして「緊張しすぎる」とは、ストレス反応が過大に起きている状態である、ということがわかって頂けたと思います。

それでは私たちはどうして、ストレス反応という、緊張やあがりの元凶となるやっかいなメカニズムを身につけてしまったのでしょうか?

この理由をきちんと理解すると、ストレスをエネルギーに変えて能力を発揮できる理由がわかります。

やや専門的な話になりますが、詳しく解説していきます。

CapD20150517_1結論から言うと、ストレス反応は、動物が長い進化の過程で身につけた生存のためのメカニズムです。

このメカニズムを約80年前に発見したウォルター・キャノンという学者は、ストレス反応を「闘うか逃げるか」反応と名付けました。

たとえば、ネズミが野生で生き残るためには、蛇という「外敵」を見るだけで、「闘うか逃げるか」のためのエネルギーを体の中に確保するメカニズムを身につける必要があったのです。

そのメカニズムを身につけなかったネズミは、逃げ遅れて、滅んでいき、ストレス反応を身につけたネズミと、その子孫だけが、敵から上手に身を守り、長い進化の過程で生き延びてきたのです。

ストレッサーを感じると、心臓がドキドキするのは、「闘うか逃げるか」のために必要なエネルギーを確保するためです。つまり、全身により多くの血と酸素を送るためなのです。これは人間だけでなく、全ての動物、それどころか、魚類から鳥類まで、身につけているメカニズムです。

ほとんどの動物は、このストレス反応を、生存のため、まさに「闘うか逃げるか」のエネルギーとして使います。これにより、動物は、敵から襲われたときに、跳んだり走ったり、その本能的能力を最大限に発揮することができるのです。

トラウマによる条件反射が緊張の引き金

これまであなたがどんなに頑張ってプラス思考に努めても、あがり症を乗り越えることができなかった原因について、それを理解する鍵となるのが「トラウマ」です。

トラウマとは、強い感情をともなう失敗体験や恐怖体験で、何度もリアルに映像がフラッシュバックされたり、ふと思い出されてしまったりする「つらい記憶」です。

「大事な試験で緊張してしまい、頭が真っ白になった」
「仕事の相談のさいに、上司から威圧的に怒鳴られた」
「大切な取引先でのプレゼンでしどろもどろになって大失態を演じた」
「学生時代の全校スピーチで固まってしまい、大恥をかいた」

トラウマの、より軽度なものが苦手意識といえるでしょう。

GUM01_PH04016トラウマを抱えている人は、人前に立っただけで、会議室や面接会場に入っただけで、体が震えたり、心臓がドキドキしたり、汗をかいたり、口が渇いたり、胃が収縮したりするといった生理ストレス反応が起きて、不安になったり、怖くなったり、思考が働かなくなったりといった状況に追い込まれます。

どうしてまだプレゼンも始まっていないのに、会議室に入るだけで、ストレス反応が起こって心理的な苦痛を生み出したりするのでしょうか?

自分で思い出したくて、もしくは意識的に、このようなトラウマ記憶をフラッシュバックさせていたのでしょうか?もちろん、そうではありません。しかし、無意識にフラッシュバックさせてしまっているのです。「無意識」というのがポイントです。

実は、無意識こそが、トラウマの本質なのです。このトラウマ反応の本質については、有名なパブロフの犬の話がとても参考になります。

ロシアの生理学者パブロフは、実験中、犬に餌を与える前に、鐘を鳴らしました。これを繰り返すと、鐘を鳴らすだけで、犬は唾液をたらすようになりました。これは専門用語で「条件付け」と呼ばれています。

反対に、餌を与えるのではなく、鐘を鳴らすと同時に電気ショック与えることを続けると、鐘の音を聞くだけで、犬は怯えて震えるようになります。「鐘の音」という条件が、「震え・恐怖」という反応に結びついたのです。これも「条件付け」です。

より正確には「恐怖条件付け」と呼びます。

あなたが特定の場面で、体が震え、汗をかき、不快な感覚に陥るのは、この「恐怖条件付け」と呼ばれる神経メカニズムが原因です。このような「恐怖条件付け」の神経メカニズムによって、あなたは、過去にやってしまった大きな失敗や恥ずかしい思いを、無意識のうちに思い出してしまうのです。

EK151_L思い出したくて思い出すのではなくて、反射的に思い出されてしまうのです。基本的には、日本人が梅干しを見ただけで、反射的に「唾」がでるのと同じです。

PTSDと呼ばれているメンタル症状をご存知でしょうか。PTSD(心的外傷トラウマ障害)とは、過去に衝撃的なトラウマを体験すると、突然その記憶が蘇ったり、何らかの些細な出来事がきっかけとなったりで、ひどく心が緊張してしまい、日常生活に支障をきたしてしまうメンタル症状のことです。

例えば、阪神大震災を経験した方の中には、震度1や2の地震を感じただけで、ものすごい恐怖感に襲われる人もいます。また、JR西日本の尼崎脱線事故で生き残ることができた乗客には、いまでも電車に乗ることができない人も少なくありません。電車を見るだけで、そのときの恐怖体験がよみがえるのです。

トラウマによる恐怖感情(=ストレス反応)は条件反射的に起こるのであって、決してマイナス思考から起こるものではありません。

気合やプラス思考では、梅干しをみて出る唾を抑えることはできないのです。

アドレナリンの神経作用

「火事場の馬鹿力」という言葉があるとおり、人間も、大きなストレスがかかるような緊急時には、通常発揮できない能力が発揮できるようになります。s-CX110_L

例えばゴルフでは、優勝争いなどの緊迫した状況になると、いつもよりボールが飛んでしまうという現象が起こることが知られています。

このような場合、スポーツ選手のインタビューなどでは、「アドレナリンが出すぎた」などと表現されますが、アドレナリンは、生理ストレス反応として分泌されるホルモンのひとつです。ストレッサーを感じると、魚も、鳥も、ネズミも、シマウマも、そして人間も、このアドレナリンが分泌されるのです。そして、それが全身に作用して、いつも以上の力を出すことができるようになります。

生理学や神経学の研究から、このアドレナリンは、体にだけ作用するのではなく、脳にも作用することがわかっています。つまり、ストレスは、運動生理機能だけでなく、人間の思考や感情といった心的機能にも影響を与えるのです。

多量のアドレナリンは、あなたを過度の興奮状態に陥らせ、心臓がドキドキしたり、手に汗をかいたり、胃が締めつけられたりといった生理反応を起こすだけでなく、不安や緊張を煽り、落ち着いて冷静に考えることをできなくさせます。

心理学の実験でも、アドレナリンを注射された被験者は、コメディー番組や悲劇的な映画をみて、普段以上に大笑いしたり、大泣きしたりすることが分かっています。アドレナリンは、良い意味にも、悪い意味にも、感情を増幅するものなのです。

プレッシャーのかかる場面で、「この試験によって人生が決まってしまう…」「失敗したら、もう終わりだ」といったような、普段では考えないようなマイナス思考に陥ってしまうことがあるのも、アドレナリンが多量に分泌されていることが関係しています。

前章でも説明した「考えすぎることの悪循環」も、このようなアドレナリン過多なストレス状態から生み出されているといえます。これまで、性格分析やプラス思考の本を読んで、そのときは「前向きに考えればいいんだ」と納得できたとしても、いざ、本番となると、その通りに考えることができなかったのは、アドレナリンのためだとも言えるのです。

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