先日、石井塾近くの三田図書館の新刊コーナーで、こんな本を見つけたので、借りてみました。
『あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます』(主婦の友社2016)
うーん、どうなんでしょう。あがり症は病気なのでしょうか?最近では何でもかんでも病名をつける傾向にあります。
病名がつくことで、これまで自分では説明できなかった悩みが解決されることがあります。
例えば、今話題の発達障害アスペルガーなど。それはそれで良い部分もあるとは思いますが、こと「あがり症」に関して言えば、どうなのでしょうか?
この本では「あがり症」を薬で治療することを勧めています。
あがり症の治療で使われる薬は、うつ病の治療薬としても有名な「SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)」、抗不安薬、そしてベータ遮断薬の3つです。
石井塾にも、これまで大勢のあがり症の方がいらしていて、少なからずの方が、薬を服用していました。
薬が効くのか?と聞かれれば、私は迷わず「効く!」と返答できます。軽いあがりや過緊張だったら、ばっちり薬の効果はあります。
しかし、薬を飲んで、あがり症を抑えることができたとしても、薬を飲み続けなければ効果は続きません。飲んでいる限りは大丈夫ですが、飲まずにいられなくなります。結果として、会議や演奏の前に、もう10年以上も薬を飲み続けていた人が何人もいました。ただ、症状が出始めた初期の頃に服用すれば、2回目以降は飲まないでも大丈夫なこともあります。
本当にひどいあがり症=社交不安障害の方は、ほんの少人数での会話や会議、電車内や喫茶店などでの視線などにも、苦痛なほどになる人です。
そんな人ならともかく、スポーツや演奏、プレゼンなどの場面でだけであがる人は、わざわざ病気にする必要はないのではないか?というのが私の考えです。
そもそも、あがりや過緊張というのは、あるトリガーに対して過剰反応する、単なる症状なのです。決して慢性的な病気ではありません。
本当にひどい社交不安障害の方は、まずは服薬をお勧めしますが、特定場面でのみ反応する人は、あがりや過緊張はトレーニングでほぼ改善します。10年以上も薬を飲み続けていた人も、地道にトレーニングを重ねることで、多くの人が克服できています。ただ、改善に要する時間は、個人差があります。
あがり症に効く薬は、心療内科や精神科ですぐに簡単に処方してくれますが、個人クリニックだと、まず自分で克服する方法を教えてくれないし、そういったところを紹介してくれません。だって、定期的に来てくれる良いお客さんですから。