手の震え・書痙

弱音のロングトーンで弓が震える。泣きながら帰宅したコンマスが、4ヶ月後の本番で弾き切るまで

昨日、合奏練習で周りが心配になるくらい震えてしまい、人知れず泣きながら帰宅しました。

石井塾のお試し相談の申込フォームに、こう書かれていました。

差出人は、趣味でバイオリンを続けてきた30代の会社員。

所属するアマチュアオーケストラで、初夏の演奏会のコンサートマスターに推薦されたところでした。

弱音の箇所になると、右手が震える

申込フォームには、こう続いていました。

子供の頃(高校生くらいまで)は毎年発表会に出演し、本番こそ緊張するものの、人前で弾くことに大きな抵抗はありませんでした。

大学生以降、独奏の機会が全くないことで、少人数で弾く場面では必ず右手が震えるようになりました。本番だけでなく、練習の際でも、弱音の箇所を弾く時は必ず症状が表れます。

曲を楽しもうと思って臨んでみてもあまり効果はなく、本番が来るのが怖くて悩んでいます。

弱音の伸ばしで手が震えてしまう。

これと同じ内容の相談は、弓を使う楽器の方から繰り返し届きます。アマチュア演奏家だけでなく、プロのオーケストラ団員からも、フリーランスの奏者からも。

弱音の伸ばしでの、手の震えを抑える、一番簡単な対処策は、ベータブロッカーを服用することです。

実際、かなり多くの弦楽器奏者は、ベータブロッカーに頼っているのですが、彼女はこれまで薬を使ったことはなく、できれば薬を使わずに乗り越えたいという意向から、メンタルトレーニングを申し込んだそうです。

最初に変わったのは、眠りだった

2月上旬にお試し相談を受け、その翌週からトレーニングが始まりました。

石井塾では、まずは呼吸の基礎をしっかりと指導します。そのうえで、それを演奏や本番でどう使うかを積み上げていきます。

派手なことは何もありません。毎日続けて、そこで自分が気づいたことを次に生かしていく。その繰り返しです。

彼女は、朝と夜の呼吸を毎日続けました。通勤で駅から歩く道でも呼吸をしていたそうです。

1週間後の報告で、二つのことを話してくれました。

一つは、弾きながら呼吸を試すうちに、アップボウで息を吐くと震えが小さくなる、と気づいたことです。

そこから、どのタイミングで吐くのが自分に合うのかを、少しずつ自分で調整していきます。震えに対して自分から打てる手がある、と分かったことが、最初の安心材料になりました。

もう一つは、眠りのほうでした。呼吸を続けるようになった頃から、夜中に目が覚めることがなくなっていました。

話を聞くところ、コンサートマスターに推薦されてから、頭痛と、夜中に目が覚めて眠れなくなる状態が始まり、それが続いていたそうです。

頭痛がひどく、脳の検査まで受けました。検査では異常が見つからず、頭痛は薬で収まりましたが、眠れないほうは残ったままでした。

その眠りが先に改善したのです。演奏の相談で来たのに、最初に動いたのは演奏と関係のないところです。

実はこういったことはよく起こります。ひどい下痢や便秘が改善したり、胃痛が改善するなどです。

本番トラウマを克服し、全国コンクール1位に 管楽器奏者のメンタルトレーニング体験談今年3月に入塾したプロ音楽家Dさん。先日の某全国コンクールで念願の一位を獲得できたとの報告を受けたので、お願いしてメンタルトレーニング体...

まだ震えると分かっていて、試演会に出た

入塾から3週間後、石井塾の試演会がありました。

本番の機会を作るために、塾生が集まって人前で演奏する場で、年に一度ほど開いています。

あがり症の克服に向けて本番経験を積もう!初企画の石井塾音楽会(試演会)10月27日(日)の午後、石井塾でのはじめての試みとして、音楽演奏に取り組んでいる塾生とOBが集まって、スタジオを借りて、それぞれ演奏を...

彼女にとっては、本当に久しぶりのソロ演奏でした。

準備期間が短かったので、比較的簡単な曲(愛の挨拶など)を選んだものの、3週間で震えがなくなるはずはありません。本人もそれは分かっていました。それでも、貴重な本番の舞台ということで、新幹線に乗って参加しています。

演奏を終えた彼女から、後日、報告が届きました。

想定通り右手は震えてしまったものの、教わった呼吸法やイメージトレーニングのおかげで、頭が真っ白になるまでのパニックには陥らず、気持ちを込めて弾くことができました。

そして同じ悩みを抱える塾生の演奏や話を聞けたこと、それぞれが自分と向き合い努力していること自体にものすごく励まされました。

今はできることを1つずつ積み重ねて、いつか緊張と上手く付き合い、心に響く演奏をしたいという思いが強くなりました。

大変貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

これとは別に、セッションでは、もう一言ありました。

「悔しい」

このパッセージをこう弾こうと準備していたのに、それができなかった。うまくいかなかったという話ではなく、やりたいことがあったのにできなかった、という悔しさです。

でもこの悔しさがあるからこそ、ひとは頑張れるのです。

断り続けていたブライダル演奏を、引き受けた

彼女とのトレーニングで課題だったのは、6月の演奏会に向けて本番の回数が少ないことでした。

小さな本番でもいいので、成功体験を重ねていくこと。これが恐怖心やトラウマを克服していくうえで、とても大事になります。

ところが、あるのはオーケストラの合奏練習だけで、2週間に1回あるかどうかです。

私の懸念を伝えると、ブライダル演奏の話を以前から受けている、と教えてくれました。怖くてずっと断り続けていたものの、これも機会だからと、オーディションを受けてみると言ってくれました。

オーディションを何とか通過。3月に先輩の演奏を見学し、4月にデビューしました。そこからは月に2回ほど、本番の場に立つようになります。

同じ頃、オーケストラの合奏練習でも変化が出ています。入塾のきっかけになった、あの合奏練習のようになるのではないか。直前までそう思っていたのに、少しドキドキした程度で、震えはほとんど出ませんでした。

本番の機会が足りないなら作る。ここまで自分で積極的に準備できる人であれば、変化が起こらないはずがありません。

順調に来たと思っていたのに、本番2週間前のリハーサルで崩れた

5月の中旬、指揮者による通し練習がありました。

準備をして臨んだにもかかわらず、チューニングの段階からおかしくなりました。ふわふわした感覚のまま曲に入り、普段は問題のない箇所も崩れ、震えも出たそうです。

ブライダル演奏のほうも、毎回震えは出るので、彼女としては、トラウマが積み上がっていくように感じていました。

本番まで、あと2週間。

このときのセッションで彼女に伝えたのは、次のようなことでした。

技術的にはもう仕上がっているので、ここから楽器を弾き込んでも、上積みはほとんどない。それどころか反復練習は、本番で力が入る原因になり、音楽そのものを壊してしまう。

だから本番までは、楽器を使った練習をできるだけ抑えて、イメージ中心に切り替えてほしい、と。

不安なときほど、楽器を持って弾いていたくなります。弾いていれば安心できるからです。

それをやめるのは、彼女にとって怖かったと思います。それでも、本番で結果が出やすいのはこちらのほうです。

最後のセッションは、本番の2日前でした。そこでも、当日のイメージを一緒に一つずつ組み立て直しました。

あとは本番まで、それを頭の中のイメージで繰り返すだけです。

本番では、震えなかった、それどころか…

演奏会の翌日、報告が届きました。

石井先生こんにちは。

昨日無事に演奏会を終えました。

結果、本番では今までの不安は何だったのかと思うくらい、自由に伸び伸びと弾くことができました。

最初の1人入場はもちろん緊張しましたが、メンタルリハーサル通りのお辞儀とチューニングを終えたことで、その後どんどん曲に没入していく感覚があり、メイン曲のシビアな箇所は今までで1番自分をコントロールして良い音で弾くことができました。

後半のチューニングでは心音も落ち着き、手の震えも全くありませんでした。

曲の盛り上がる場面では、今までのことが思い起こされて感極まり涙が出そうになる感覚にまでなりました。

通常練習を含めても本番が1番思い通りに表現できたことに自分でも驚いています。

ちなみに本番直前の決意表明スピーチや、打ち上げの挨拶も準備していた内容をそのまま伝えることができました。

呼吸法の継続トレーニングで平常心を取り戻す回復力を鍛えておくこと、メンタルリハーサルで本番の環境に慣れておくことが、私にとっては言葉以上に重要な備えとなっていたことを強く体感しました。

先が見えない真っ暗な絶望感の中、石井先生に導いていただいて心から感謝しています。

 

正直、ここまでとは思っていませんでした

私が想定していた以上の結果でした。

私から見ていても、本当に良い準備ができていたので、多少の震えは出たとしても、本番では自分の演奏ができました!

そんな報告が来ると思っていました。

ところが、震えは出ないだけでなく、通常の練習を含めても、本番が一番思い通りに表現できた、と本人が書いています。

報告の中に、どんどん曲に没入していく感覚があった、という一文があります。これはフロー体験と呼ばれる、演奏家にとっては最高の体験です。

演奏フローへの道 本番で本来の力を発揮し、音楽の喜びを取り戻す方法音楽家にとって至高の集中状態であるフローに入る方法をプロのメンタルコーチが解説。本番で本来の力を発揮して、音楽の喜びを取り戻そう。...

もし彼女がベータブロッカーを使っていたら、震えは抑えられたかもしれません。

しかし、この「曲に没入していく感覚」や「感極まって涙が出そうになる感覚」のほうは、どうだっただろうかと思います。

ベータブロッカーが興奮を抑えるということは、恐怖だけを選んで抑えるということではなく、感動も抑えてしまいます。

真面目にコツコツ取り組める方ほど、石井塾のやり方は合います

石井塾のメンタルトレーニングは、地道に続けられる人ほど結果が出ます。

彼女はそれができる方でした。朝と夜の呼吸を毎日続け、通勤の道でも呼吸をして、本番の場がないなら自分で作り、まだ震えると分かっていて試演会に出る。

受動的なところや、近道はどこにもありません。

もし他の方法を選んでいたら、相性次第では、こういう結果にはならなかったかもしれません。同じ方法が誰にでも効くわけではなく、その人に合うやり方があります。

弓を使う楽器で手の震えに悩んでいて、課題に地道に取り組むほうが性に合っている。そういう方であれば、石井塾のやり方は合うと思います。

演奏の緊張や震えについては、石井塾の考え方からトレーニングのやり方まで、こちらのページにまとめています。

入塾簡易診断のご案内

石井塾の短期集中プログラムに興味を持たれた方は、まずは「入塾簡易診断(無料)」を受けてみてください。

メンタルトレーニングは相性がとても大切です。

この入塾簡易診断は、あなた(やお子さん)の課題解決にとって、石井塾が選択肢になりうるかを、まず簡単に確かめるためのものです。

所要時間は約2〜3分、ほとんどが選択式で答えるだけ。

診断結果は即時、メールにてフィードバックされます。

簡易診断を始める


簡易診断を受けた方には、2009年に出版された塾長の書籍『ここ一番に強い自分は科学的に作り出せる(こう書房)』の全文PDFを無料進呈しています。20年以上も変わらず続く、石井塾の基本メソッドがわかります。