名将と言われた野村克也監督は、かって雑誌のインタビューで次のように語っていました。
プロ球団に入団できる投手は、ごく一部の超一流選手を除いて、ブルペンで投げるボールに大きな差はない。
プロで成功するかは、バッターに投げるときに、ブルペンと同じボールを投げられるかどうかで決まる
もしあなたが、次のうち、3つ以上当てはまるものがあれば、この記事はきっと役に立ちます。
☐ 練習での良いプレーが、試合ではできない
☐ 大事な場面ほど、体が硬直し、力んでしまう
☐ 以前は良かったのに、最近は停滞している
☐ 試合前夜や当日の朝、不安で体が重くなる
☐ 一度ミスをすると、その後ずるずると崩れる
☐ 監督やコーチ、周囲の目が気になって思い切ったプレーができない
いかがですか?
こうした悩みは、技術不足だけが原因ではないし、性格の問題でも、気持ちが弱いからでもありません。
では、なぜ起こるのか。まずはその仕組みから理解していきましょう。
なぜ試合では思ったように投げらないのか?
ブルペンでは150キロが投げられる投手が、なぜ試合になるとそれができなくなるのか?
多くの野球選手が抱えているこの疑問には、脳科学的な答えがあります。
それは、プレッシャーが脳の出力パターンを変えるから、です。
基本的に、誰でも、練習よりも試合本番のほうがパフォーマンスの質は下がります。
- ブルペンと試合のマウンドでは、見える景色が違う。
- 意識しようとしまいと、「やり直しできない、負けられない」という思考が働く。
- 打席にバッターが立っている。
これらはすべて無意識のプレッシャーとなり、脳の出力パターンを変えてしまいます。
大げさに言えば、吊り橋と横断歩道の上を、全く同じように歩くことはできません。
上級者ほど体の動きは高度に自動化されており、多くの経験も積んできているので、その出力パターンの誤差は小さくなります。
しかし上級者ほど、非常に高いレベルでの再現性を求められるため、ほんのわずかな変化が成績低下に直結します。
だからこそ、悩んでいるプロ野球選手は多いし、悩みも深いのです。
中高生の野球選手の中には、「実力がついてくれば、こういった不安はなくなるはず」と思う方もいるかもしれません。
残念ながらそんなことはありません。
実力が上がれば上がったで、さらに高いレベルのプレーを求められ、さらに強い相手が待っています。
どんなにレベルが上がっても、強いメンタルを持っていても、この課題から完全に解放されることはありません。
しかし、あなたにも心当たりがあるはずです。
プレッシャーをものともせず、すべてがうまくいった試合が。
それが「ゾーン」と呼ばれる状態です。
究極の集中「ゾーン」とは?
これまでの野球人生で、試合中、こんな感覚に陥ったことはありませんか?
ボールに体が勝手に反応してくれた
すべてがスローモーションに見えた
あらゆることをコントロールできていた
余計な雑念がなく、集中が途切れなかった
すべてのことが自動的に起こっていた
あなたが高いレベルで野球を続けてきたのであれば、必ず何度かは体験したことがあるはず。
この状態が、いわゆるゾーンです。
あなたの力を100%発揮されていた状態です。
そして、ゾーンが頻繁に起きていた時期に、あなたの野球のレベルは一段上がり、成長を実感できていたはずです
反対に、ゾーンがほとんど起こらなくなってからは停滞中で、成長している実感がほとんど得られてないはずです。
では、なぜゾーンが起こらなくなるのか。
その裏側では、多くの選手がある悪循環に巻き込まれています。
萎縮の悪循環に陥るとき
本番でパフォーマンスが下がること自体は、脳の仕組み上、誰にでも起こりえます。問題は、そこからどうなるかです。
試合で思ったような結果が出ない。すると、次の試合では「また失敗するのではないか」という不安が生まれる。
その不安がさらにプレッシャーとなり、体がもっと固くなる。そして結果がますます悪くなる。
ミスの記憶がグラウンドに立つたびによみがえり、練習量を増やしても抜け出せなかった。
多くの場合、いきなり「全く別人」になるのではなく、この悪循環に少しずつ巻き込まれていくのです。
この記事を読んでいるあなたは、もうその悪循環の中にいるかもしれません。
もっと簡単な言葉でいえば、スランプです。
しかし、諦める必要はありません。先ほどの選手がそうだったように、正しいメンタルトレーニングに取り組むことで、この悪循環から抜け出すことができます。
ここからは、私が野球選手に指導している具体的なメンタルトレーニングを紹介します。
萎縮の悪循環(スランプ)にいる野球選手のメンタルトレーニングの始めかた
では、具体的にどんなメンタルトレーニングが良いのでしょうか?
私が野球選手にまず勧めるのは、次の2つのステップです。
ステップ① レゾナンス呼吸法で平常心をつくる
すべてのメンタルトレーニングの基礎になるのが、呼吸のコントロールです。
具体的には「レゾナンス呼吸法」という方法で、平常心を自分で作り出す練習から始めます。
その① 椅子に座り、姿勢をただす
椅子には深く腰掛けずに、地面と90度となるように背骨をまっすぐ伸ばし、軽く胸を張るような感覚で、少し顎を引いてください。
その② 意識をみぞおち周辺に向ける
右手をイラストのようにみぞおちの上に置いてみることで、みぞおちへの意識がより簡単になります。
心臓への意識は、次のステップでも続けてください。
その③ そのまま5秒間隔で、吐くと吸うを繰り返す
少しだけ深めに、できるだけ自然に、5-6秒間隔で呼吸を繰り返して下さい
平常心を作りだす呼吸法はスキルですから、繰り返しの練習で必ず上達します。
ステップ② 試合に向けた呼吸の実践活用
呼吸法を基礎スキルとして身につけた後に、次にあなたが取り組むのは、試合に向けて呼吸をどう使うのかという応用スキルの習得です。
まずは次のような場面で、数分から20分くらいの呼吸法に取り組みましょう。
- 試合前日の夜
- 試合当日の朝
- 球場に向かうバスや電車の中
- ベンチやブルペンでの待機中
試合前はバタバタしてしまうかと思いますが、これらは忘れなければ必ず実行できるはずです。
そして、より望ましいのが、試合中に呼吸を行うことです。
試合中に呼吸なんてできない!と思われるかもしれませんが、大丈夫。
必ずできます。
ただ、レゾナンス呼吸のように「5秒で吸って、5秒で吐く」といった呼吸にはならず、状況に応じて、
- ゆっくり長く吐く
- 短くしっかり吐く
こういった呼吸になるかと思います。
例えば、ピッチャーであれば、
- マウンドに向かうまでに歩きながら
- 投球直前(セットアップ中)
- 投球後
- タイム中
バッターであれば、
- ネクストバッターズサークルで
- バッターボックスに向かうまで
- 打撃ルーティンの中に入れる
などなど。
そして大事なことは、吸うのではなく、吐くことを意識することです。
一般的には深呼吸するときは、つい吸ってしまいますが、ぜひ「吐く」を意識してみてください。
これまで指導したハイレベルな野球選手のほとんどが、この「吐く」をタイミングよく行うことで、本番では余計なことを考えなくなり、力を発揮できたと報告をくれています。
ステップ③ メンタルリハーサルで「体が勝手に動く」準備をする
呼吸法を習得した後に取り組むのが、イメージトレーニングです。
イメージトレーニングと聞くとひとつの方法のように思えますが、実はやり方はさまざまです。
私が野球選手に強く勧めているのは、これから迎える本番を頭の中で想定する「メンタルリハーサル」という方法です。
注意してほしいのは、多くの選手がやりがちな「理想の本番をイメージする」だけでは不十分だということです。
大事なのは、相手投手(打者)とのかけ引きを、頭の中でさまざまにシミュレーションすること。
うまくいく場面だけでなく、困難な状況にどう対処するかも含めてリハーサルします。
野球のレベルが高くなればなるほど、考えずに体が勝手に反応してくれたほうがパフォーマンスは高まります。
メンタルリハーサルは、まさにその「体が勝手に反応してくれる」準備として非常に有効です。
主要スポーツの中でも、野球はメンタルリハーサルの効果が最も出やすい競技だと考えています。
たった1回イメージするだけでは暗示以外の効果は期待できませんが、何度も繰り返すことで、「勝手に反応する」効果が着実に高まっていくのです。
ここまで読んで、「自分にもできるのか?」「自分の場合はどこから始めればいいのか?」と感じた方は、まずは石井塾の全体像ページをご覧ください。
メソッドや成功事例、プログラムの流れをまとめています。
【事例】メンタルトレーニングで変わった野球選手たち
事例1:ボーイズリーグの中学3年生 — 2週間後の公式戦で走者一掃の二塁打
中学2年生まではのびのびとプレーしていた選手が、最終学年になって変わりました。
「スモールベースボール」を掲げる監督の細かい指示や叱責、周囲の目に晒される中で萎縮し、打撃不振と守備のエラーを重ねて、本来の実力を発揮できなくなっていったのです。
最後の公式戦を前に、普段の練習でもひどいプレーをすることも多くなり、試合に出られるかも危ぶまれる状態で、父親が見かねて、インターネット検索し、申し込みがありました。
ただ、最後の公式戦まで約2週間。
大至急、呼吸法とイメージトレーニングに取り組み始めました。
迎えた初戦。呼吸法を取り入れたことで、ガチガチだった上半身の力が抜け、自然体で打席に入ることができました。
結果は3打席中2本の二塁打(一本は走者一掃)。
打つ直前まで呼吸を意識し、打席では「体に任せる」ことで、バットが自然に走ったそうです。
2回戦でチームは敗れ、引退が決まりました。
しかし個人の内容は充実していました。
サードとして6回の守備機会をすべてノーエラーで処理。
打撃は3打数無安打でしたが、以前のように崩れることはなく、「相手投手が良く、駆け引きの準備が足りなかった」と自分で冷静に分析できていました。
試合前に「うまくいかない場面」も含めたメンタルリハーサルを行っていたことで、ミスの後もパニックにならず対応できたのです。
何より大きく変わったのは、試合前日になるとガチガチだった選手が、「試合が楽しみ」と言えるようになったことです。
それは推薦で入学が決まっていた高校野球でも、必ず生きるはずです。
事例2:東京六大学の野手 — ガチガチでバットが振れない状態から、最終カード4安打
甲子園に複数回出場し、大学2年時には、外野レギュラーとして全日本選手権大会優勝に貢献した選手。
しかし大学4年、チーム事情として監督に気に入られないとすぐ降格させられる環境のなか、結果が出なくなり、監督の目を気にするようになって委縮の悪循環に入りました。
ドラフトがかかる大事な秋季リーグ。開幕戦はスタメン出場したものの、全くバットが振れず、ヒットが出ない。
試合前に体が重くなり、不安で自分を信じられなくなったことから、リーグ開催中に本人から石井塾に相談がありました。
まずレゾナンス呼吸法を丁寧に教え、毎日30分の練習を指示。
正しい呼吸ができているか確認できる呼吸ツールも貸与しました。
入塾数日後の打撃練習で、本人も驚くほど腕の力が抜け、打球の勢いが全く違ったとの報告がありました。
2回目のセッションでは、ベンチやネクストバッターズサークルでの呼吸、バッターボックスでのルーティンへの組み込みを指導。
第2カードでは久しぶりに落ち着いて試合に入ることができ、ヒット2本、四球も選べるようになりました。
3回目のセッションで打撃のイメージトレーニングを教えましたが、直後に練習中のケガで2カード分を欠場。
それでもケガの間にイメージトレーニングは続け、最終カードに復帰すると、2試合で4安打を記録しました。
わずか6セッション、しかも途中でケガによる中断がありながらの回復でした。
もう少し早い時期にメンタルトレーニングに取り組んでいれば、ドラフトにかかる結果もあったかもしれません。
事例3:NPB若手選手 — 呼吸法で守備が安定し、自己最多出場
高校生ドラフト上位で入団した20代前半の選手が、シーズンオフに自らインターネットで検索して来塾。
1軍での試合経験はあるものの、プレーの質にムラがあることが課題で、1軍に定着できないでいました。
良いときと悪いときの差が激しく、本人は毎回同じように準備しているつもりでも、その違いが自分ではわからず、監督やコーチからの評価も伸び悩んでいました。
少し時間をかけて呼吸法を習得し、守備場面でルーティン化したところ、まさに「考えないで、感じる」ができるようになりました。
難しい守備機会も安定してこなせるようになり、コーチからの信頼を獲得。
すぐに1軍に昇格し、主に守備固めで出場を重ねました。
あるゲームでは、その日のスポーツニュースで何度も取り上げられたスーパーファインプレーを決め、プロ入団以来の自己最多出場試合数を達成しました。
トータルでは約10セッション、呼吸法を中心としたトレーニングだけでこの結果が出ています。
元来はスラッガーとして期待されていた選手だったので、イメージトレーニングまで取り組めていれば打撃面でのさらなる飛躍もあったはずですが、それでも5年ほどユーティリティプレイヤーとして在籍を続け、今もコーチとしてNPBに関わっています。
あなたも必ず変われます
もしあなたが今、委縮の悪循環の中にいるなら、その苦しさは痛いほどわかります。
練習では手応えがある。技術が足りないわけではない。それなのに試合になると体が動かない。
努力しているのに結果が出ない。その焦りと不安が、さらに次の試合を苦しくする…。
真剣に野球に取り組んでいるのであれば、委縮の悪循環はレベルに関係なく起こります。
高校野球、草野球、リトルリーグでも、仕組みは同じです。
大切なのは、精神論に走ったり、いきなり試合での成果を求めたりするのではなく、まずプレッシャーに対処できるメンタルスキル(呼吸やルーティン)を正しく身につけること。
その土台があって初めて、試合に向けた準備が機能し、悪循環から抜け出すことができます。
私はこれまで20年間、20,000時間以上にわたって、本番で力を発揮できずに苦しむ人たちを個別に指導してきました。
野球選手だけでなく、プロゴルファー、音楽家、医師、ビジネスパーソン、分野は違っても、萎縮の悪循環に苦しむ構造は共通しています。
委縮の悪循環から抜け出す道筋は、私が示せます。
大事な試合が近づいていて、あまり時間がない場合は、今すぐに個別相談にお申し込みください。有料ですが、オンライン(Zoom)なので、早ければ翌日には相談可能です。
「今すぐ相談するほどではないけれど、もう少し詳しく内容を知りたい」という方は、石井塾の全体像ページをご覧ください。
メソッドの方向性、成功事例、プログラムの流れをまとめています。



