集中するとシータ波になる。シータ波が創造性を高める。

このような考えが、巷で少しずつ広まっています。

しかし、私が脳波についての勉強を始めたとき、一番、理解に苦しんだのが、このシータ波です。

なぜなら、脳波トレーニングの世界では、シータ波は「抑えるようにトレーニング」するのが、一般的だからです。それがスポーツパフォーマンスであっても、ADHDの改善であってもです。

この矛盾がどこから来るのか?

アルファ波やベータ波は、比較的わかりやすいのですが、このシータ波だけは、多くの本で、まったく真逆のことを言っていることが多いのです。しかも、それはまともな研究者が言っていたり、本に書いてあったりするのです。

例えば、信頼できる本にも、シータ波は、「集中しているときや、まどろんでいるときに出るもの」と書かれているのです。集中とまどろみって、どう考えても、一致しません

その後、しばらく研究と臨床を重ねていて、やっと、シータ波の、この二面性の本質が見えてきました。

多くの研究者ですら誤解しているほどのことなので、決して単純ではありませんが、日本語でまともに解説されているページがないので、少し時間をかけて、できるだけ丁寧に解説していきたいと思います。

>> シータ波の真実を探究してみませんか?(2016年11月29日のエントリー)

脳波というのは、頭皮から測定される、微弱な電流です。

この微弱な電流は、脳の大脳皮質の活動状態を示しているといわれ、大脳皮質が活性化していれば、電流の波形は細かく(速く)なり、不活性では、波形は大きく(遅く)なります

脳波には、デルタ波、シータ波、アルファ波、ベータ波がありますが、それぞれ、1秒間の波形数(振幅数Hz)が、1-4回、4-8回、8-12回、13回以上となります。

つまり、この脳波の振幅数で、脳の活動状態が、なんとなくわかるのです。

デルタ波=かなり不活発な状態
シータ波=不活発な状態
アルファ波=休息中(アイドリング中)の状態
ベータ波=活性状態

もうひとつ、脳波を理解するうえで大事なのは、大脳皮質は部位によって、役割が大きく違うということです。

たとえば、脳の前頭部(前頭前野)は思考や意識のコントロールにかかわっていますし、頭頂は体の感覚や運動を司っています。

また、よく知られているように、右脳と左脳では、同じ前頭前野でも、また違った役割をしています。左脳は論理的思考で、右脳は創造的・社会的思考です。また、あまり知られていませんが、右脳は非論理的・妄想的なネガティブ思考を生み出します。

つまり、脳波から、大脳皮質の活動状態を理解するには、その脳波が、どこから測定されたものなのかで、大きく異なるのです。

ですから、ベータ波が左前頭からたくさんでているときには、思考が活発化していることがわかるし、非常にたくさん出ているときには、余計なことまで考えている迷いの状態にあることすらわかることがあります。反対に、アルファ波になっているときには、あまり考えていないことがわかります。

アルファ波やベータ波は、この原則にほぼ則っているので、理解がしやすいのですが、シータ波だけが、別の要素が入ってきてしまうので、理解が複雑になります。

それが海馬の働きです。


海馬とは、脳の奥のほうにある部位で、主に短期記憶を司っています。海馬が損傷すると、昨日今日の出来事は何も覚えていないのに、2年前の出来事は覚えているという症状が起こります。また、ストレスは海馬を萎縮させることでも知られていて、極度のストレス状態が続くと、物忘れがが激しくなるのは、このためです。

そして、海馬は、活発的に働いているとき、シータ波を発生させます。これは、大脳皮質の働きにかかわらずです。

つまり、短期記憶を積極的に使う精神作業をしているとき、この海馬から大量のシータ波が生み出され、それが脳波として、現れてくるのです。

そして、海馬が脳の奥のほうにあることから、その現れかたに、特徴が出ます。それは、右脳と左脳の「溝」の部分から、脳波計では、シータ波が検出されやすくなるのです。それがつまり、前頭中心部(front midline)なのです。

この意味では、集中しているときにシータ波が出ているというのは、正しいことなのです。

ただし、ここが大事なのですが、より正確にいえば、「短期記憶を使う精神作業中において、前頭中心線上から、シータ波が観測される」ということです。研究などでも、計算作業などに集中しているときに、シータ波が出ていることが証明されており、これがシータ波=集中の考え方のもとになっています。

そして、この集中は、石井塾で取り組んでいるスポーツや演奏の「ゾーン・フロー」といった集中状態とは異なるということです。ゾーン中は、短期記憶はあまり使われていません。さっき覚えた技術を発揮してゾーンを体験することなどできませんから(笑)。



インターネットを見ていると、集中法のひとつに「残像イメージ」というのがあります。これを提唱している人のサイトや本を読むと、残像イメージ中(カードに書かれた絵を思い出す)に、シータ波が増加する研究について触れられているし、それを確認できる脳波計を使ったトレーニングを推奨しています。

その脳波計が映っている写真をみると、やはり測定は、前頭中心部になっています。
これはこれで、ひとつの集中法といえますし、これまでの説明の通り、一見、トレーニングとして、理に適っているように思えます。しかし、実は、そんな単純な話ではないのです。

というのも、精神作業中に、シータ波が増加するには、作業前の準備段階で、シータ波が抑えられている必要があるのです。シータ波ができる限り抑えられた状態において、一気にシータ波が解放され、シータ波が増加することになります。

脳波には個人差があり、絶対的な数値はありません。大切なのは、個々人の変動幅なのです。この変動幅は、当たり前ですが、増加前に低いほうが、大きくなります。だからこそ、集中のためのシータ波を増やすには、実は、シータ波を抑える訓練をすべきなのです。シータ波を増やすより、基準値を減らすほうが、トレーニング効果が高まるのです。

私がこれを自信をもっていえる根拠は二つあります。ひとつは、そのことはシータ波の権威であるKlimeshの論文に繰り返し書かれていること。もうひとつは、脳波トレーニング(ニューロフィードバック)が盛んな海外の臨床家の間では、シータ波を下げる方法が、基本中の基本と考えられていることです。

私自身は、海外の情報を参照に、脳波の世界に入ってきたのですが、日本の情報と、海外の情報が、シータ波に関してはあまりにも違うので、当初戸惑っていました。最近、やっと理解できた感じです。

じゃあ、残像イメージは、集中法としてはダメなのかというと、そういうことではなく、「作業記憶をフル活動し、その一点に集中する」トレーニングとしては、大事な場面で、不安や迷いを追い出したりできるようになる効果が期待できます。その意味では、簡単な集中法としてはお勧めです。ただ、シータ波を増やすだけではなく、減らすトレーニングも併せて行うことで、より効果が高まります。

如何でしょうか?

ここまで読み進められた方は、正直少ないと思いますが、シータ波と集中の関係について、より理解が深まったものと思います。

集中しているときにシータ波になるのは、FM部分から観測されるシータ波(FMシータ)だけです。反対に、その他の部分では、シータ波よりも、ベータ波が増えることになります。

ただし・・・、シータ波の理解の厄介なところは、これだけではないのです。

それは、シータ波が、様々な自己啓発や、能力開発、救い、創造性発揮に役に立つといわれていることについてです。インターネットをみると、本当に多くの自己啓発が、シータ波を、その論拠としています。

果たしてシータ波は、そんな魔法を持っているのでしょうか?

次回は、その論拠について考えていきたいと思います。

>> シータ波の真実を探究してみませんか?(2016年11月29日のエントリー)



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