時速300キロで走行するカーレーサーのメンタルトレーニング 

昨秋より、石井塾には、モーターレースでは国内最高峰の舞台で戦っているカーレーサーが来ています。

時速300キロを超えるレースでは、コンマ1秒で何十メートルも進んでしまいます。運転中に考える時間はありません。だから、良い運転をするには、考えていてはいけないそうです。

石井塾では、「考えないで、感じること」の重要性を常に強調していますが、その重要性を良く理解しているからこそ、石井塾の門を叩いたそうです。実際、石井塾のメソッドとは相性がよく、201*年のシーズン前ですが、かなり好調な感じです。

ドライビングで大事なことは、常に限界にまで、車のポテンシャルを引き出すことだそうです。車のポテンシャルは、走っていく中で、タイヤの摩耗度や空圧、路面コンディションなどによって刻々と変化します。走っているとき、それをいちいち考えていては、最高の力を発揮できません。それでは遅すぎるのです。考えるのではなく、感じて、無意識に限界を探り続けることが重要です。

調子が良いときには、自然と、どのように次のコーナーを攻めるか、イメージが浮かび、体が勝手に反応してくれるそうです。反対に、調子が良くないときには、このイメージが自然に出てこないし、体がうまく反応してくれなかったり、コースの攻め方を考えてしまっている自分に気が付くそうです。

彼とは、セッションの度に、時速300キロを超えて走る車のドライビングでできるメンタルコントロールについて、いろいろと一緒に考えながら、この「考えないで、感じる」ための方法を模索しています。本番では考えてはいけませんが、準備のときにはしっかり考えるのです。

まず取り組んだのが、レース前に気持ちを落ち着かせること。レース前に心が不安定であれば、それはレース中のドライビングに必ず影響を及ぼします。そのために、レゾナンス呼吸は必須です。彼は本番レースの10日前に入塾しましたが、すぐにその効果を実感できたそうです。

ツールを貸して、レース直前に心拍数を測定してもらったところ、なんと150を超えていたそうです。それでは落ち着かないのは当たり前です。心拍数を80にすることはできませんし、その必要もありませんが(300キロを超える車を運転するのに、心拍数80では無理です)、より低い、適度な心拍数で安定させることができれば、ドライビング中のメンタルが安定するものです。

呼吸法で、レース前に気持ちを落ち着かせることの効果はあったのですが、もっとパフォーマンスを高めるために、それ以上、何かできないかを探りました。

話を聞くと、ドライビングはとても体に負担がかかる(いわゆるGがかかる)ため、何十周もしていると、疲労が半端なく溜まっていくそうです。このため、ドライバーの多くは、かなりフィジカルトレーニングを重ねているそうなのですが、それでも後半、集中力が途切れてしまうことがあるそうです。

どんなに体を鍛えても、うまく力を抜くことができなければ、結局、疲労は蓄積していくし、集中力を持続させることはできません。これを理解していないアスリートが(コーチや監督も)が、実に多いのです。

適度に、タイミングよく、力を抜くことができるようになること。それは集中力を持続させ、高いパフォーマンスを発揮するには、体を鍛えることと同じくらい重要なのです。ですから、レース中に、少しでも力を抜くことはできないか、まず第一段階として、呼吸をコントロールすることはできないか?彼に問いました。

前回書いたように、レースではコンマ一秒で何十メートルも進みます。そんなレースのさなかに、呼吸法ができるはずがない、というのが最初の反応でした。しかし、よーく考えてもらったところ、ホームストレッチ(メインスタンドの前の直線コース)であれば、なんとか呼吸を意識できるのではないかという話になりました。もちろん、ゆっくり5秒で吐いて、5秒で吸ってはできませんが。

その宿題を持ちかえってもらって、その後のレースやテスト走行で試してもらったところ、最初は上手くできなかったり、余裕なく忘れてしまったことも多かったものの、なんとか少しはできるようになり、それに伴い、レース中の体の負担が大きく改善していることに気づいたそうです。

そして、慣れてくるにつれ、ホームストレッチ以外でも、呼吸に意識を向けられるようになっているそうです。そして、その結果として、体力的に楽になり、集中力が持続するようになり、テスト走行でもかなりの記録が出始めたそうです。

シーズンは4月に始まります。

実はまだ、イメージトレーニングについてはほとんどできておらず、まだまだ伸びしろはあります。レースは月に1度、それも違うサーキットで行われるので、その準備としてのメンタルリハーサルが特に重要です。今年、年間王者を獲得した時には、実名で登場してもらいたいと考えています。十分に狙える位置にいる選手です。こうご期待!


<追記>
このカーレーサーですが、シーズン初戦で素晴らしい走りを見せてくれました。しばらく調子を崩していたこともあり、レース中継では何度も「○○選手復活」と解説者が言っていたのが印象に残っているのですが、それで油断したのかどうか、そのあと忙しいとのことで、セッションに来なくなりました。

そして残念なことに、そのシーズンは初戦が結局ベストフィニッシュで、そのあとは、レース途中まで上位にいても、不運やミスが起こり、なかなか上位に食い込むことができないで終わりました。そして翌年以降も同じ感じでした。

上記ブログで書いたように、シーズンに入ってから、よりリアルにレースをイメージして、本番に向けた準備をするつもりでいたのですが、結局それができなかったことが、最後の詰めを欠くようなレースが続いてしまったのではないか?と推察しています(実際にはわかりませんが)。

レースをイメージする力は、たとえ彼のような一流レーサーでも、すぐに習得できるものでもはなく、地道に少しずつスキルとして高めていくものなのですが、イメージの重要性は伝えてあったので、恐らく単純な成功イメージを自己流でしてしまったのではないか?とも推察しています。

いずれにせよ、もう少し地道に続けていれば、もう少しそれ以降の結果は違ったはずで、とてももったいなかったなというのが正直な本音です。

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