イップス・ジストニアの一要因 エラー予測脳波

私たちが意識的に、自発的な動作を行う際には、必ず、その約0.5秒前に、脳がそのための活動を開始することが知られています。

これは「マインド・タイム」と呼ばれ、私たちの脳が、意識を生み出すために必要な時間だと考えられています。

この時間(時差)を利用して、無意識のうちに、脳は次の動作の準備をします。簡単に言うと、その動作のシミュレーションを行うのです。

止まっているエスカレーターを上ろうとするとき、瞬間的に、体が前のめりますよね?

これは、脳が、これまでの経験から、動いているエスカレーターに対しては、体を前傾させて、バランスを保つためを学習し、その動きを無意識にしているからなのです。無意識にシミュレーションを行っているのです。

そして、このシミュレーションのあとに、実際の動作が始まり、体が動いていくのです。

簡単に言えば、私たちの意図的な動作は、必ず、予測してから、それに連れられて、実行されているのです。全て無意識に。

予測→実行→照合 これの繰り返しです。

この予測に対して、実行の段階で、体を間違って動かしてしまうことがあります。そして、そのとき、瞬間的に、このままだと間違った動きをしてしまうことが「わかる」ことがあります。

一般人の場合、予測精度も高くないし、それを修正する能力もないのですが、この「わかる」がわかり、瞬時に修正できる人もいるのです。

ある技術を徹底的に磨いたプロフェッショナル(アスリート・音楽家など)や、トップアマチュアの場合、非常に精度が高くシミュレーションが行われるので、実際の体の動きが始まってから、その動きが予測とずれてしまったときに、それが間違いを引き起こすことを瞬間的に感じ取り、そして瞬時に修正する能力を身につけています。

例えば、プロゴルファーは、ダウンスイングの時に、このままだと「ひっかけてしまう」というのを感じ、瞬間的に、フェイスを開いたり、片手を離したりすることで、ミスを最小限に抑えるといったことができるのです。野球投手であれば、このままでは「ど真ん中に投げてしまう」というのを感じ、敢えて指をひっかけて低めに投げるということができるのです。

このような修正は、その道のトップレベルのひとであれば、サッカー選手も、ピアニストも、プロボウラーも、必ず体験しているはずです。

かなり最近になって、ミスを犯しそうなとき、脳には、その動作の0.07秒前に、それを知らせる特殊な脳活動(脳波・pre ERN)が起こるということがわかってきています。

本ブログでは、イップス・ジストニアの原因について、これまで考察してきましたが、今では、私は、これこそが、イップスやジストニアについて説明する、最も説得力のある原因のひとつだと考えています。

つまり、簡単に言ってしまうと、イップス・ジストニアは、この脳活動(pre ERN)が暴走している状態で、不必要な時にまで、「このままだとまずい!」信号を強く体に送ってしまう状態に陥っているのではないかと考えるのです。

そして、高確率で、この暴走が起こるので、それを繰り返すうちに、その動きをするのが怖くなってしまい、体が固まってしまったり、まともに動かせなくなったり、という状態に陥ってしまうのではないか、と考えています。

あくまで仮説ですけどね。

2011年に発表された、ピアニストを対象とした研究において、イップス(ジストニア)を発症しているピアニストでは、健康なピアニストと比較して、このpre ERNが異なっていることが判明しました。

EEG oscillatory patterns are associated with error prediction during music performance and are altered in musician’s dystonia.

また、同じ研究者が行った別の研究からは、その直前の脳波次第で、このpre ERNが変わってくるということもわかっています。

ということは・・・、この続きはまたいつか書きたいと思います。

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