メンタルトレーニングで恐怖心やイップスにどう打ち勝つか?

フィギュアスケート競技のためにメンタルトレーニングを受講している塾生とのセッションで話を聞いたのですが、近年、フィギュア競技において、ジャンプの重要性が一段と高まっているそうです。

女子は、トリプルアクセル(3回転半)を飛べれば、それだけで日本代表になれるし、男子ジュニアも、大会でトリプルアクセルを飛べれば、世界ジュニアでメダルが取れるとか。なので、ジャンプの練習もとても重要になっており、日々の練習においての取組割合は高くなっているそうです。

昨年のシーズンから、男子と女子のフィギュア選手をメンタルトレーニングで指導しましたが、二人とも、ジャンプ練習が怖いというのです。踏み切る直前になんか怖くなってしまい、思い切って飛べないとのこと。それを「パンク」というそうです。調子を崩すと、練習中にパンクばかりするようになるそうです。

これはフィギュアをやっている選手のほとんどが抱えている課題らしく、結局、それを「強い気持ち」で乗り越えたものだけが、羽生選手のように世界に羽ばたける、というような指導がされるようです。その恐怖に打ち勝つために必要なことは、気持ちで負けないこと。絶対にできると信じること。転んでも、大した怪我にはならないから思い切ってやることだけを考える。こんな指導が一般的なようです。

もちろんこれも大事だし、ファーストステップであることは間違いないのですが、私は長く悩んでいる人には、多くの場合、メンタルトレーニングで克服できると確信しています。

というのも、今、脳科学では、この踏み切る直前に「恐怖心」が湧いてしまう理由を、ほぼ完全に解明しているからです。専門的にいえば、恐怖反応の条件づけができているから。簡単にいえば、恐怖の条件反射ができているのです。条件反射なので、踏みきりに来るまでは、強い気持ちでいることができても、踏み切りのときに「怖さ」が出てしまうので、その結果、体が思い切って動かなくなるのです。

浅田真央が引退に追い込まれた理由も、この恐怖心にあったんだろうなあと推測されます。後半、トリプルアクセルが本当に飛べなくなっていましたから(体が大きくなったという説や、指導者が変わったという説もありますが)。

これはイップスと呼ばれる症状を抱えるゴルファーやテニス選手にも共通していることです。ただ、ゴルフのイップスは、ジャンプのように飛ぶわけではないし、結果として怪我をするわけではないので、本来の意味での「恐怖」ではない分、実際にイップスを抱えてしまった選手は心理的に苦しみます。なんで怖いんだろう・・・と。

こういった症状で悩む選手を、精神論や根性論で指導すれば、なかにはそれで立ち直る人もいるのも確かですが、なかなか症状が改善されない自分に自信がなくなり、さらに悪化してしまうことも少なくありません。

条件反射は、レモンをみると唾が出るようなものです。ですから「レモンは甘いんだ」と強く思うこと、自己暗示をかけることで、唾が出ないようになる人がいます。実際、暗示・催眠は、恐怖症やイップスを治療する上で、一定の効果が認められているメンタルトレーニング(セラピー)です。ネットで知られている、イップス治療専門セラピーをやっている専門家は、私が理解する限り、このアプローチをしています(「無意識に働きかける」というような表現をしている専門家はそうです)。ただ、暗示・催眠が効果があるのは全員ではありません。もともと暗示や催眠にかかりやすい人限定です。そういった人であれば、一時的な効果は期待できます。その効果がでているうちに、次の手を打って効果が持続するようにすることがポイントのようです。

前述したように、気合や根性論で、「絶対にできると信じること」ができる人は、ある意味、「怖くない!」という自己暗示か、指導者からの暗示がかかったことで、自力で克服できたのでしょう。

石井塾では、暗示・催眠系のメンタルトレーニングはやっていません。私は昔から、恐怖心が生まれる神経メカニズムを理解した上で、地道に克服する方法を模索していて、それでたどり着いたのが、少しずつ条件反射(条件付け)を弱くするというアプローチです。専門的には「系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)」というアプローチをベースにしています。これは高所恐怖などの治療にも良く使われている方法です。ただ、このアプローチを勉強したからといって、すぐに使えるものではなく(だからここに開示できるのですが)、結局のところ、この系統的脱感作をどう行うか?何と組み合わせて使うのか?がメンタルトレーナーの経験であり、腕の見せどころです。恐怖の対象となるものや、起こる場面は、競技や選手によって異なりますから。

まずはメカニズムをきちんと理解することが大事なのです。恐怖は思考よりも、早くて、強いのですから、理想論・精神論よりも、もっと現実的なアプローチがあるのです。フィギュア選手へのメンタルトレーニング指導でいえば、二人ともジャンプの怖さはかなり克服できました。普段の練習でジャンプが不安になり、「パンク」と呼ばれる、ジャンプするところでできなくなる症状はかなりなくなったという報告を受けています。練習でパンクしてしまうということは、本番がどうのこうのという前に、いい練習ができないわけですから、そこで成長が止まってしまいます。どんな競技においても、そんなもったいない状況になってしまったら、早めに石井塾の門を叩いて、メンタルトレーニングを始めてください。特に、暗示催眠系をやってみたものの、どうも効果がイマイチだったという選手はウェルカムです。ただ、症状の深刻度によっては、必ずしも克服できるわけではないし、ある程度の時間はかかることは頭に入れておいてください。

イップスの原因と克服については、ゴルフイップス克服ページをご覧ください。

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