演奏の緊張やあがり症

音楽家(合唱指揮・鍵盤演奏)のメンタルトレーニング体験談

幼い頃からピアノを習い、中学から合唱を続けて、将来は音楽教師になろうと音楽大学に入りました。その時期に、いまの先生となる方と出会い、合唱指揮の方へと進みました。ある合唱指揮のコンクールで1位入賞と留学を経て、現在は合唱指揮の仕事をしています。そのほか、ピアノ、オルガンの演奏もしています。

音楽活動のメインは合唱指揮ですが、特にピアノ演奏の際、本番で手が硬くなったり震えたりする症状がありました。ある大きなコンクールの伴奏で難易度の高い作品を弾くことになったとき、ここで自分に必要なのは、技術や音楽性を磨くこと以上に「本番で安定したパフォーマンスができる力をつけること」だと思い、この機会にβ遮断薬などを使わずに克服できるようなメンタルトレーニングをされている石井塾を見つけ、入塾しました。個人競技のスポーツ選手たちが、精神論や宗教的なものではなく、「呼吸」と「イメージ」をもとに科学的にトレーニングを行なっているところに惹かれて選びました。

コンクール本番までの時間は1ヶ月と限られていましたが、レゾナンス呼吸を伴った本番のイメージトレーニングを入念に行ったところ、指が硬くなったりせずに、緊張しながらも比較的落ちついた状態でコンクール本番を終えることができ、共演者の上位入賞という結果にも貢献できたと思っています。何より自分自身にとって、これまでで一番手応えのある本番となり、自信になりました。

この経験を通して、所謂「あがり」は治すことではなく、付き合い方を変えれば良いという考え方ができるようになりました。「あがり」の原因となる脳のストレスは必要なものであり、それがあっても大丈夫なように体を整えることのほうが重要だと教えてもらったからです。お陰で「あがること」=「勇気がない」ということではないことに気づきました。

また、呼吸を整えることと、イメージ力を鍛える大切さを知り、様々なことに応用していけるものであると感じました。実際に呼吸で心拍数をコントロールするトレーニングをする過程で、予想をしていなかった多くの発見がありました。それを2つにまとめると、、、

1つは、呼吸に集中することによってその他(特に不安要素)について考える隙間がなくなるのでストレスが軽減されること。

もう1つは、呼吸(自分の内側)に集中することで、むしろ相手(自分の外側)とのコンタクトを落ち着いて取りやすくなること。

特に2つ目が大きな発見でした。概念的なことですが、そのくらい呼吸と人間関係は密接に繋がっていることなのだと思います。仕事柄、世代を越えて多くの方と接したり指導したりする中で、これはとても大きな収穫となっています。

ピアノ演奏に関しては、これまで本番に向けて準備をするときに「同じ練習のしすぎ」に問題があるということは、石井先生に指摘されるまで気づけていませんでした。時間ではなく、「良い練習」が足りなかったのです。弾けない部分をひたすら反復練習したり、ただ満足感を得るためだけの練習を改善したりして、時間の使い方にもメスを入れることができました。鍵盤を触らずにイメージの中で弾くことも増えましたし、そのほうが暗譜も進み、良い演奏ができるということがわかりました。

また、指揮をすることにも大きな変化がありました。ある合唱コンクールに出場するときに、練習日数がとても少ない中、メンバーがなかなか揃わない日もあり、それでもよい練習を積むにはどうしたらよいのだろうと考えた末にやってみたのは、イメージの中で彼らと事前にリハーサルをすることでした。イメージの中で相手と実際にやりとりを繰り返して、その中で出てきた音に対して「もっとこういう音で」「その言葉はこんな風に」などと反応しながら曲作りをしていきます。そうするうちに自分の作品に対するイメージが整理されていて、それが何より実際のリハーサルで活きることとなりました。そして、そのように準備をした曲で、その合唱コンクールで優勝することができ、さらには課題曲賞も頂くことができました。受賞後に、作曲家の方から直接、「意図が読み取れた」とおっしゃっていただいたことは、とてもうれしく光栄なことでした。

演奏家やスポーツ選手など、分野は違っても似た問題を抱えて相談にいらっしゃる方がとても多いことに驚きましたが、同時に勇気付けられました。石井先生とのセッションの中では、普段は人に話さないような心の奥の部分を明言化したり、記録用紙に文章化するので、自分の嫌な部分や見たくない部分に向き合うため、辛いこともありましたが、お陰でこれからの課題を整理する機会となりました。

本番で力を発揮するということに関しては、まだまだ改善途中ですが、いま、自分はようやくゼロ地点に立てたのではないかと思っています。石井先生からいただいているヒントを元に、より質の高い演奏を目指して続けていきたいと思います。


与えられた課題をただこなすだけでなく、「その課題から得られるものは何なのか?」を積極的に探しだし、自力でモノにするという姿勢は、私がこれまで関わった、ほかの多くのプロ音楽家に共通する姿勢ですが、彼女もまさにそういった姿勢を身につけていました。そのような姿勢があれば、彼女が体験談で書いてくれたように、短期間で、当面の課題を解決できるだけでなく、それ以上の変化を実現できるものです。スポーツやビジネスの成功は、パーソナリティーや得意分野かどうか、運などにも左右されますが、音楽家として成功し、生計を立てられるようになるかどうかは、このような姿勢に基づく、地道で継続的な練習によって可能性が高まるものだということを、つくづく実感します。

しかし、音楽家として成功し、生計を立て、世の中の多くの人に影響を与えるには、それだけでは不足していることもあります。彼女は、少し謙虚すぎるところがあるので、自分を上手くアピールしていくことも必要でしょう。性格的に、他者を押し退けてということはできないでしょうし、本人に合わないことを勧めるつもりもありませんが、インターネットで自分の夢ややりたいことを発信していくことは、より彼女の活動の可能性は広がると思うので、セッションで話し合い、計画を立てながら、具体的に動けるようにフォローしています。すぐに何か結果につながるわけではないし、忙しいし、少し腰は重いのですが、こういったことも、彼女が「努力に見合った」「本来の力を発揮できるようになる」ところにつながっていると思うのです。

演奏パフォーマンスの改善は、比較的短期間で実現しました。今後はさらなる演奏での高みを目指しつつ、次は中長期的な目標実現のために、支援できればと考えています。

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