ゴルフ、ボウリング、射撃、アーチェリー、野球(ピッチャー)、テニス(サーブ)、ダーツなど、再現性が求められる競技においては、どんなに調子が良くても、必ずミスが起こります。例えば、10回に1回くらいとすると、10%ですね。

その10%のミスが起きて、狙った方向よりも右にいってしまうミスが起きた場合、通常、多くの選手は、右にいかないように気をつけるか、左を狙ったりします。

これは正しい対応でしょうか?

普通に考えると、当たり前の対応ですよね。

ところが、一般には、あまり知られていない、次のような脳科学的な事実から考えるとどうでしょうか?

私たちの脳は常に「ゆらいでいて」、脳がたまたま大きくゆらいでいるときの動作だけがミスにつながる

私たちは、熟練した動作については、意図したとおりにできると思っていますが、それは実は正しくなく、動作は、意図したときの「脳のゆらぎ」に影響を受けてしまうというものです。脳の揺らぎは、脳波である程度は測定できます。

ゴルフのパッティングの研究からは、パッティングの0.5秒前の脳波の状態によって、そのパットの正確性が決まってくることが分かっています。これについては、池谷有司氏の『単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)』に詳しく書かれています。

単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

例えば、野球で説明すると、野球のピッチャーが、キャッチャーが構えたミットにボールを投げられないのは、投球に入る直前の「脳の状態」によって決まってしまうのです。ゆらぎが正常の範囲内であれば、ミットにボールは向かいます。ゆらぎが一定の枠を超えているときに、投球に入ったボールは、ミットから外れてしまうのです。

ちょっと常識では考えられないですよね?

でも、これが事実なんです。ただ、私たちはそれを自分ではわからないだけなのです。

ゆらぎが何で起きるのかは、ほとんど解明されていません。ただ、不安や緊張などの感情、ネガティブ思考が影響するのは間違いないと思われます。ゆらぎが起こる理由や必要な理由は、上記の本にとても詳しく書いてあり、納得できます。

このように考えると、10%の確率で起きるミスに対して、どう対応するか?の答えは見えてきます。そう、「何もしない」です。

右に行かないように気をつけようとしたり、左を狙ったりすることで、脳の揺らぎはさらに大きくなり、より頻繁に、大きなミスが出やすくなるのです。

ですから、10回に1回のたまたまのミスであれば、何もしないが正解です。右に行くミスが10回に3-4回も起こるようになると、それはそれで別の対応が必要です。私はこういったことを、再現性の求められる競技の選手には、試合中の対応策として、繰り返し指導します。

ところで、ここまで理解できた方であれば、一番気になるところは「どうしたら、そのゆらぎをコントロールできるのか?」ですよね?

ミスが起きない(ゆらぎの小さい)状態を自分で作り出すことができれば最高ですから。

実は、上述の池谷氏の書籍では、「アルファ波の少ないときにパッティングすれば、パットは精度は上がる。そしてアルファ波は脳波トレーニング次第でコントロールできるようになる」と書いてあります。

CapD_151私は、この書籍を6年ほど前に見つけたことをきっかけに、パッティングと脳波の研究を始めました。東工大の先生との共同研究でした。

結論からいうと、上記の池谷氏の見解(解釈)は間違っているということが、1年半かけてわかりました。

脳のゆらぎ自体は正しいのですが、「アルファ波が少ないときに打てば精度が上がる」というところが間違っていたのです。正確には「精度の高いパッティングをした時に、アルファ波が小さくなる」です。

ここは似ているようで、かなり大きな違いです。研究者の方であれば、ERD(事象関連脱同期)という言葉で理解できると思います。

このようなことが後から判明し、私のパッティング研究は、多大な時間と、労力、費用をかけた割には、何の成果も出せなかったのですが、このときに得た脳や脳波の知識は、今では私にとってはとても大事な武器になっています。なぜなら運動の再現性の基本原理を知ることができたからです。

そして、さらに大切なことは、このゆらぎは脳波で測れるのですが、そのゆらぎを制御できるかもしれないメンタルトレーニングが見つかったことです。

リオ五輪に出場が決まったクレー射撃の石原選手は、リオ最終予選の競技前に、このトレーニングを地道に行っていました。

単なる偶然かも知れませんが、これからゴルフやボウリングなど、また演奏などの再現性が求められる技能をもつ塾生と、色々と試していきたいと思います。

>>姉妹ブログ「塾長の「脳の探求」ブログ」関連記事:ゴルフの再現性を高める脳トレ

 

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